韓国の聯合ニュースと朝鮮日報が北朝鮮軍の兵士の越境亡命事件を詳しく報じている。
亡命に際して、上官二人を射殺した特異なケース。単なる上官に対する反抗が亡命の原因なのか、あるいは北朝鮮軍の内部に規律の乱れが生まれているのか、まだ分からない。南北軍事境界線には、北朝鮮も精強部隊を配置していると、いわれてきただけに北朝鮮軍内部の情報を得る手がかりとなろう。
ことしは異常気象の影響で不作といわれている。食糧不足が精強部隊にまで及んでいるとしたら、北朝鮮軍に士気の乱れが出ている可能性がある。
朝鮮日報は、韓国軍は警備態勢を強化しているものの、現在まで北朝鮮軍は特別な動きを見せていないもようだと報じた。不気味な沈黙が、逆に気になる。いずれにしても竹島問題で騒いでいる場合ではない。
<【ソウル聯合ニュース】北朝鮮兵士が6日に上官2人を殺害し、南北軍事境界線を越えて韓国に亡命した。韓国軍は亡命の動機や経緯について調査しているが、今回の亡命を機に北朝鮮が軍事挑発してくる可能性も視野に入れ、警戒態勢を強化している。
事件は6日正午すぎ、非武装地帯(DMZ)の軍事境界線付近にある北朝鮮の監視所で起こった。6発の銃声が聞こえた後、武装していない兵士が軍事境界線を越えて韓国側に走ってきた。
監視所は軍事境界線から北朝鮮側約数百メートル地点で、南北経済協力事業を行う開城工業団地に通じる道路沿いにある。兵士はこの道路に飛び出し韓国入りした。亡命してきた兵士は「警戒勤務中に小隊長と分隊長を射殺した」と話した。
今回の亡命は上官2人を殺害したという特異なケースなため、韓国軍はすぐに警戒態勢を強化した。
ソウル・竜山にある合同参謀本部は特別グループを稼動させ、金寛鎮(キム・グァンジン)国防長官と鄭承兆(チョン・スンジョ)合同参謀本部議長は亡命事件の報告を受けた後、北朝鮮軍の動向を点検した。
事件後、開城工業団地の関係者約300人は午後2時から2時半にかけて韓国に戻った。また韓国の入居企業関係者2人は北朝鮮への出張を取り止めた。韓国軍と政府は、事件が開城工業団地に影響を与えるのではないかと懸念している。
◇10年で兵士5人が亡命
2002年からの約10年で軍事境界線を越えて亡命した北朝鮮兵士は5人になった。同年2月に将校が小銃2丁を携えて、韓国最北の都羅山駅近くから越境してきた。08年には2人が亡命。10年3月には副士官が東海岸に近い東部戦線を越えて韓国に亡命した。
軍消息筋は、今回の亡命について「北朝鮮軍の綱紀が緩んで起こった」と話した上で、最近、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が相次いで前線部隊を視察したため、前線部隊に対するプレッシャーが強まったことも関係があるかもしれないとの見解を示した。(聯合)>
<6日午後、北朝鮮兵1人が小隊長と分隊長を射殺した後、軍事境界線を越えて、韓国軍の警備詰所で帰順した。
合同参謀本部関係者は「同日昼12時10分ごろ、京畿坡州の軍事境界線の北側から銃声が聞こえた後、北朝鮮軍兵1人が越えて来て帰順の意思を示した。軍事境界線の詰所で哨戒勤務中だった韓国の警備兵が安全に帰順を勧め、身柄を確保し、現在安全な場所で保護し、合同審問を行っている」と伝えた。
この北朝鮮兵の陳述によると、北の警備詰所で共に勤務していた小隊長と分隊長を射殺したという。なお帰順した際、この北朝鮮兵は武器を携帯しておらず、負傷もしていなかった。
軍事境界線を挟んで韓国と北朝鮮の詰所はわずか500メートル。このため、帰順した北朝鮮兵が小隊長と分隊長とみられる死体を動かし、韓国側の詰所に走って来る場面を韓国側の警備兵全員が目撃したという。走って来る北朝鮮兵に対し、韓国側の警備兵は拡声器で帰順の意思を確認し、韓国への帰順を助けた。
この過程で、韓国軍と北朝鮮軍の間で銃撃戦などの事態は発生しなかった。韓国軍は警備態勢を強化しているものの、現在まで北朝鮮軍は特別な動きを見せていないもようだ。(朝鮮日報)>
杜父魚文庫
10674 北朝鮮兵士の亡命 緊張感に包まれる韓国軍 古澤襄

コメント