十一月六日の米大統領選まで一ヶ月を切った。民主党のオバマ大統領と挑戦者の共和党・ロムニー候補の争いは予断を許さない。
終始、優勢に駒を進めてきたオバマ大統領だが、両者の第一回テレビ討論会では精彩を欠き、一部の世論調査ではロムニー優勢を伝えるところもある。
しかし過去の大統領選では、挑戦者に関しては、一回目の討論会で得た優位は長続きしないジンクスもある。あと二回あるテレビ討論会でオバマ大統領の巻き返しがあるかが注目の的となった。
日本にとっては、どちらが次の米国大統領になっても日米関係は揺るぎないだろう。オバマ氏が再選されれば、現在の日米同盟関係が継続される。
ロムニー氏になると、そのアジア政策がどうなるか。ロムニー氏のこれまでの演説では具体的な外交政策がみえてこない。
クリントン大統領からブッシュ大統領に代わった時にも、ブッシュ氏のアジア外交がみえなかった経験がある。当時の森元首相に「私見だがスタンフォード大学のコンドリーザ・ライスに注目している」と言ったことがある。
ライスは国家安全保障担当補佐官ブレント・スコウクロフトの下、国家安全保障会議東欧ソ連部長として、ソビエトおよび東ヨーロッパの専門家として、一部の日本人には知られていたが、知名度は薄かった。
だが、ライスの支持者からは、アメリカ屈指の戦略家であり、オフェンシブ・リアリスト(攻撃的現実主義者)と評されていた。ブッシュ氏がライスを重用すると教えてくれたのは、在米経験が長いジャーナリスト。
それで調べると、ライスはバランス・オブ・パワーを破壊しようとする勢力には当然に武力行使も選択肢に入れた対応をしなければならないとする立場。
クリントン政権のアジア外交は必ずしも成功していない。ライスは共和党政権になれば、アジアの自由主義陣営を核とした新しいアジア外交を唱えていた。これはリベラリストのように経済に深入りし過ぎた判断をしないハードな外交姿勢といえる。
ロムニーの本質はリベラルだから、自分が大統領になってもブッシュのようにライスを重用するかは分からない。手詰まり感がある米国の対中政策は、このまま迷走する可能性すらある。もう一度、ライスの登場を秘かに期待しているのだが・・・。
杜父魚文庫
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