10690 軍事境界線の防衛ラインに韓国軍の緩み  古澤襄

韓国の朝鮮日報が「亡命事件で露呈した韓国軍のずさんな前線防御態勢」と韓国軍を批判した。そうだろう、大統領がみずから竹島上陸というパフォーマンスを演じてみせた国である。肝心の軍事境界線(MDL)を護る韓国軍に防衛の緩みが出ているとしても不思議ではない。
それが、「韓国西海岸に続き、今度は東部戦線に「穴」…前線は不安だらけ」「2009年には民間人による鉄柵突破事件発生…同じ師団でまたも問題」とメデイアの追及を浴びた。
北朝鮮軍の兵士の亡命で、北の士気の緩みを喧伝した韓国が、軍事境界線(MDL)を護る韓国軍の防衛線にも緩みがあることを、認めざるを得ないのは皮肉な結末といえる。
次の最有力な大統領候補・セヌリ党非常対策委員長の朴槿恵氏は、一九七九年に父親の朴正煕元大統領が暗殺された時に、ファーストレディーとして放った言葉は「休戦線は大丈夫か!」。
朴槿恵氏は親日家ではない。むしろ反日色が強いといわれる。それでも父の死亡を耳にした際の第一声は、混乱に乗じて朝鮮人民軍が侵攻する事を懸念している。いまの大統領とはだいぶ違う。
<韓国軍の前方警戒態勢に、大きな穴が開いた。北朝鮮軍の兵士1人が、亡命するために今月2日夜に韓国軍の鉄柵を越えたが、一般前方哨所(GOP)の生活館の前にやって来るまで、韓国軍では状況を全く把握できていなかった。先月には、脱北者がひそかに江華島に入り込み、6日間も民家などに隠れていたが、住民の通報があるまで全く気付かなかったという事実も判明した。
韓国軍の合同参謀本部(合参)は、北朝鮮軍兵士の亡命事件から5日が過ぎた今月7日、ようやく問題の部隊に調査団を派遣したという。「深刻な規律の緩みを示す証拠」という指摘が出るのも当然といった状況だ。
■「北朝鮮兵士1人に、GP・鉄柵・GOP全て破られた」
合参によると、今月2日午後11時20分ごろ江原道高城のA師団に所属するGOPで、生活館の前に北朝鮮軍の兵士1人がいるのを、哨所の状況室勤務者が監視カメラで確認した。この勤務者が連絡するまで、GOPの警戒兵はこの事実を知らなかったという。
韓国軍は、軍事境界線(MDL)から約2キロ離れた場所に鉄柵を設置し、MDLと鉄柵の間に最前方警戒哨所(GP)を置いている。このようにGPと鉄柵、GOPの警戒兵からなる防御網を全て突破して、北朝鮮軍の兵士は、韓国の兵士が眠っているGOPの生活館までやって来たというわけだ。
当時この部隊は、午前中に民間人から「江陵の鏡浦台に北朝鮮の潜水艦が現われた」という通報を受け、警戒態勢を強化していた。韓国軍の消息筋によると、この北朝鮮軍兵士は20代で、非武装状態だったという。この兵士は、鉄柵を切断せず、衣服などを利用して柵を乗り越えた可能性が高いというのが、消息筋の説明だ。
■民間人が鉄柵を破って北朝鮮入りしても気付かず
最前方地域の鉄柵は、これまでもしばしば破られていた。今月2日に事件が起きた部隊が所属するA師団では、2009年10月26日に、民間人が鉄柵に穴を開けて北朝鮮側に入るという事件が発生した。当時、この部隊で警戒に当たっていた兵士たちは、翌日北朝鮮がこの民間人の件を放送して初めて鉄柵が破られた事実を把握した。
当時、韓国軍内外からは「毎日24時間警戒に立つ鉄柵勤務の特性上、穴が開いている事実に1日以上気付かなかったということはあり得ない」という指摘が相次いだ。同じ場所では1996年9月にも、身元不明の民間人が三重の鉄柵を切断し、北朝鮮入りしたことがある。
2005年6月には、中部戦線で北朝鮮軍の兵士1人が、非武装地帯(DMZ)内に多重に張られた鉄柵を通り抜け、4日間も最前方地域を徘徊(はいかい)した末、住民からの通報で捕らえられた。04年には韓国の民間人が、この中部戦線の部隊が守る三重の鉄柵に穴をあけ、北朝鮮側に入った。1年の間に繰り返し鉄柵が破られても、この部隊では鉄柵が切られる過程を全く把握できていなかったわけだ。
■最前方の鉄柵勤務とは
前方哨所の鉄柵勤務の場合、通常は一個小隊が1-1.5キロの鉄柵を担当する。昼間は、最も高い「高架哨所」から2人1組で監視し、夜間は、状況によって人数を調節して勤務する。鉄柵の網の目からは石や空き缶がぶら下がっており、鉄柵が揺れると音がする。
韓国軍の関係者は「哨所間の距離は、30メートルから300メートルまでさまざまだが、おおむね昼は1-1.5キロ、夜は400-500メートルを監視する」と説明した。しかし、山合いの中東部・東部戦線地域のように、場所によっては鉄柵が曲がりくねっている区間があり、こうした場所では「死角地帯」が生じるというのが、韓国軍当局の説明だ。(朝鮮日報)>
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