10720 日本大使に中台韓が”総攻撃” 古森義久

本日のワシントンでおもしろい光景をみました。ブルッキングス研究所での藤崎一郎駐米大使のお別れのスピーチと、その後の質疑応答でした。
藤崎大使はすでに帰任の辞令が出ています。4年半もワシントンで日本の民主党政権のルーピーを含む弱い首相や外相を支えた実績は、アメリカ経験の豊富なプロの外交官こその強みとして広く認知されてよいでしょう。
その藤崎大使が10月11日、ワシントン市内のブルッキングス研究所で「アジアにおける日本」という題の講演をしました。その講演の司会役はアメリカ人ではないところが、このアメリカのリベラル派の研究所の特徴の一つかもしれません。日本研究の上級研究員ミレヤ・ソリス女史です。彼女が藤崎氏の紹介のために口を開くと、瞬時に外国アクセントが耳につき、普通のアメリカ人ではないことが明白となりました。
アメリカの研究所だからアメリカ人が仕切っているのだろうと思うと、そうではないのですから、要注意です。ちなみにこの人はメキシコ人の日本研究学者です。ハーバード大学の修士と博士の課程で日本の研究をしたということです。
藤崎大使のスピーチはなかなかでした。東日本大震災でのアメリカ側の支援への感謝を中心に、いま白熱の大統領選挙にも触れながら、ユーモアまじりに日米関係を語りました。そして大きな拍手のうちに演説を終えた大使は、司会役のソリス女史のスペイン語なまりの言葉に誘導され、質問に答えました。
ところがこの質問が極端で過激でした。アメリカの首都ワシントンの主要研究所でのアメリカ駐在日本大使が送別のスピーチを終えて、という舞台なのに、質問するのはみな中国系なのです。いや正確にいえば、ほとんどが中国と台湾の人たち、記者、外交官、研究者など、そこにときおり韓国勢が加わります。そして日本への攻撃なのです。
本来ならば地元のアメリカの人たちが日本大使の労をねぎらい、日米関係についての質問をするのが自然だったでしょう。しかし現実には以下のような質問ばかりでした。
「尖閣諸島(実際には彼らは中国の呼称を使っています)での紛争を起こした日本はどうやってこの状態を解決するのか」
「尖閣諸島の主権について日本は話し合いを拒むがなぜか」
「日本は尖閣問題でこじれた対中関係をどう修復するのか」
「日本は竹島に対して戦争を始める気はないか」
「日本はいま右傾化しているが懸念はないのか」
「日本は慰安婦問題できちんと謝っていないが、どうするのか」
藤崎大使は衝突を避ける語調で日本政府の立場を答えてはいましたが、今回のいわゆる尖閣問題のほぼすべてといえる中国側の反日の無法行動に対しての非難も言及もありませんでした。会場の他の人からのその点への言及もゼロでした。日本人とみられる人の質問もコメントもゼロでした。
この質疑応答を総括すると、アメリカ側の聴衆であるはずの側からは中国、台湾、韓国の人たちばかり10人ほどが次々に発言し、日本をあたかも犯罪の容疑者や被告のような扱いにしたということなのです。私の記憶の限りではすべての質問15ほどのうち、アメリカ人からの質問は3件だけでした。
司会役のメキシコ女性はこんなときは質問が尖閣や日中だけに偏らないように調整するぐらいの礼儀や配慮があってしかるべきです。しかしそんな調整は皆無、日本大使は一体、なんのためにここに招かれたのかといぶかされるほどでした。
私が強調したいのは、日本の同盟国であるアメリカを舞台としながらも、日本大使が尖閣問題で中国系勢力に言葉の総攻撃を受けて、つるしあげられるという状態は、日本にとって深刻だ、という点なのです。中国系の人たちはいわゆる記者や学者だといっても、みな自国政府と同じ立場を表明します。この点、日本とは大違いです。
日本の対外主張、対米広報に課題多し、です。
杜父魚文庫

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