10725 iPS報道、読売、共同、誤報認めおわび  古澤襄

米ハーバード大学が”虚偽・誤報”と否定した森口尚史氏のウソは、一夜で白日のもとに曝された。
iPS細胞を使ったヒトへの細胞移植を世界で初めて実施したと発表した日本人研究員、森口尚史氏は「自分は医師で、アメリカの医師の資格も持っている」と説明していた。
事実は医師でない看護師。十一日に「医師免許はないが看護師の免許は持っている」と認めた。
もしiPS細胞を使ったヒトへの細胞移植を世界で初めて実施したのなら、まさにノーベル賞ものであろう。見え透いたウソに乗せられた読売新聞と共同通信は、十三日、「一連の報道は誤報と判断した」とおわびし、検証記事を掲載している。
<<iPS移植記事 読売新聞と共同通信“誤報と判断”>>
<移植が実施されたと報じた読売新聞と共同通信は、13日の朝刊などで「一連の報道は誤報と判断した」などとする見解を明らかにし、おわびするとともに、検証記事を掲載しました。
このうち読売新聞は、13日の朝刊で「ハーバード大学の当局者や複数の専門家も真実性を否定していることから森口氏の説明は虚偽でそれに基づいた一連の記事は誤報と判断した」として、おわびしました。
また、虚偽と判断した理由や、取材経過などを詳しく検証した記事を公表し、東京本社の大橋善光編集局長が、「臨床応用に大きな希望を抱いた患者や、患者を救うために研究を積み重ねている多くの研究者の気持ちに報いるためにも徹底的な検証作業を続けていきます」としました。
また、共同通信は、学会や関連病院専門誌や専門家などに取材を行った結果、森口氏の発表は事実無根だったとする記事を12日夜、配信しました。
共同通信の吉田文和編集局長は、「研究データの点検など裏付け取材を十分尽くさず、誤った情報を読者にお伝えしたことをおわびします。今回の取材を検証し、今後は正確な報道に努めます」という談話を発表しました。(NHK)>
<<森口氏“医師免許はない”と説明変更>>
<iPS細胞を使ったヒトへの細胞移植を世界で初めて実施したと発表した日本人研究員、森口尚史氏は、当初、NHKの取材に、「自分は医師で、アメリカの医師の資格も持っている」と説明していました。
しかし、11日夜に改めて確認したところ、説明を変更し、「医師免許はないが看護師の免許は持っている」などと話しました。
アメリカのハーバード大学などによりますと、森口氏は、1999年から翌年にかけての一時期、ハーバード大学の関連病院、マサチューセッツ総合病院に在籍していました。
また、東京大学によりますと、森口氏は、平成14年から21年にかけて先端科学技術センターの特任助教授や特任教授、そして平成22年からは付属病院の特任研究員として在籍しています。
一方、森口氏は当初、NHKの取材に対し、「東京大学の特任教授で、ハーバード大学の客員研究員も兼任している」と述べていました。
さらに、「自分は医師で、アメリカの医師の資格も持っている」としたうえで、実際に「マサチューセッツ総合病院で重い心臓病の34歳の男性患者にiPS細胞から作った心筋細胞を『私が』心臓に注射して移植を行った」と説明していました。
しかし、日本時間の11日夜遅く、改めて確認したところ、説明を変更し、「医師免許はないが、看護師の免許は持っている。アメリカでは、医師の指示の下で医療行為を行う助手の資格はあり、実際に細胞を移植する注射を行った」と話していました。
取材に“なぜ大学や病院は否定するのか”森口氏は現地時間の11日、滞在先のニューヨークのホテルでNHKの取材に応じました。
森口氏は、アメリカの国際学会から研究内容について疑義が示されたことについて、「なぜハーバード大学や手術を行った病院が、臨床研究の申請を受け付けていないと否定しているのか、全く分からない。移植に関するデータなど証拠はすべて日本にあるため、今は移植の実施を証明することはできないが、落ち着いた段階で一緒に研究を続けてきたアメリカの研究者とも連絡を取り、説明をできるようにしたい」と述べました。
そのうえで森口氏は「iPS細胞から変化させた細胞をヒトに移植したことは間違いない」と述べ、実際にiPS細胞を使った治療を実施したと改めて主張しました。(NHK)>
<iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った世界初の臨床応用を森口尚史(ひさし)氏(48)が行ったとする報道について、読売新聞は12日付夕刊1面(東京紙面)で、報道内容に疑義が生じたとして、事実関係を調査していると報じた。同社は取材に対し、13日付朝刊で検証結果を掲載することを明らかにした。同様の記事を配信した共同通信は12日夜、「事実無根だったことが分かった」との記事を配信し、おわびする編集局長名のコメントを出した。
今回の臨床応用について、読売新聞は12日付夕刊1面で「事実関係を調査します」との見出しの記事を掲載、「森口氏の成果に疑義が浮上した」「報道した内容に間違いがあれば、正さなければなりません。現在、森口氏との取材経過を詳しく見直すとともに、関連する調査も実施しています。読者の皆様には、事実を正確に把握した上で、その結果をお知らせいたします」とした。また、共同通信は12日、「裏付け取材を十分尽くさず、誤った情報を読者にお伝えしたことをおわびします」とする吉田文和編集局長名の談話を出した。
東京医科歯科大は12日夕に記者会見。今回の臨床応用とは別に、森口氏が同大と、iPS細胞を使ってC型肝炎の効果的な治療薬を見つけた、とする2010年5月の読売新聞の記事についても「東京医科歯科大で実験及び研究が行われた事実はない」と発表した。iPS細胞を使った研究は一切行っていなかったという。他施設で実施したかどうかは分からないとした。この内容については、日経産業新聞も同年6月に記事にしており、日経新聞は調査を始めた。
この会見には、今回の臨床応用を発表する予定だった国際会議の抄録に名前を連ねていた佐藤千史(ちふみ)教授(総合保健看護学)も同席し、「彼のデータに整合性があると判断した。日本人の名前しかないことにもっと疑問を持てばよかった。不明を恥じている。経歴も疑っていなかった」と述べた。佐藤教授は、森口氏の大学院時代の指導教官。
佐藤教授が森口氏の複数の論文に名を連ねていたことから、同大は問題がなかったか調査を始める。
また、同じく共著者とされた東京大先端科学技術研究センターの井原茂男特任教授も会見し、「私の名前が入ることについては事前に連絡がなく、報道で初めて知った」と述べた。(朝日)>
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