10727 書評『チャイナ・ウォーズ』  宮崎正弘

尖閣戦争は目の前にあるのか? 気鋭の経済学者が説く脅威。中国は『悪の帝国』! だから日本は核保有国になると予測している。
 
<<ピーター・ナヴァロ著、小坂恵理訳『チャイナ・ウォーズ』(イーストプレス)>>
副題は「中国は世界に復讐する」とあって、なんだか物騒な感じを抱くが、原題英語は「The coming China Wars」である。若干意味が違うが、現在の日本と中国のおかれた状況から判断すれば、かくした解釈も成り立つ。
著者のピーター・ナヴァロは、どちらかといえば経済学者。カリフォルニア大学教授で、中国の専門家ではない。
だからこそ経済の視点から、中国をぶった切ると、その切り口が新鮮で衝撃的で従来的な中国観察者からは出てこなかった微妙な表現がある。
中国の奴隷工場、価格の出鱈目な設定、為替操作からはじまって公害無策、毒入り食品、ニセモノ天国の国がはたして一流の軍事力を持っていると考えて良いのか、疑問も多いが、最終的に中国の宇宙兵器を壊滅させる必要性を力説している。
本書の肯綮にあるのは、中国の果てしなき欲望、その軍事的野心をささえる経済力を観察しつつ「急速な軍備増強と経済制裁攻勢で、アジア情勢は極度の不安定化へ! 中国はアメリカと対抗する超大国を目指して、政治・経済・軍事の全ての面で「悪の帝国」化する、と言う。
レーガン大統領がかつてソ連を「悪の帝国」と規定したが、次の中国も「悪魔」というわけだ。中国が日本の領土を強奪しようと尖閣領有を宣言したが、この無謀な行動が象徴している。
「日本が防衛力を強化しなければならない理由は(中略)中国はアメリカ海軍の優位に対抗するべく、『外洋艦隊』の充実をはかっている。それが完成すれば、中国海軍はアジア全域で突出した存在になる。そんな強力な軍事力を背景に、アジアの海域を『中国の湖』と同一視するようなエネルギー政策を推し進められたら、他の国々の海上活動やエネルギー資源開発にとってじつに厄介な存在となる」(この指摘は少し古く、すでにそうなった)
そしてピーターはこう続ける。
「日本の世論や政府の政策に厄介な影響を及ぼしている。今日、中国の台頭といやがらせ行為のおかげで、日本は第二次世界大戦の終焉以来五十年以上にわたって拒んできた選択肢をとらざるをえないという見解が、日増しに高まっているのだ。それは単なる再軍備ではない。正式に『核保有国』となる道である」
きわめてタイミングの良いときに、本書は旧版を加筆して再刊された(本書は2009年に刊行されて『中国は世界に報復する』を改題し、新稿をふんだんに挿入した)。
杜父魚文庫

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