命運が尽きかけている野田政権は、閣僚のコントロールもままならないでいる。外国人献金問題に加え、暴力団関係者との交際が発覚した田中法相の進退問題は、首相周辺としては田中氏の自発的辞任によって幕引き図るつもりでいる。
放置すれば臨時国会で野党から参院で田中法相問責決議案が提出され、国会審議は冒頭からストップしかねない。それは田中氏も承知している筈である。
だが、どうしたわけか田中氏は入院先から藤村長官に電話し、「辞任の意向はない」と断言、なお抵抗する構えを見せた。まさか首相が罷免権を発動することはあるまいとみた行動であろう。ここにきて藤村官房長官の危機対応が後手に回ることが目立つ。内閣全体が揺れている。
<外国人献金問題に加え、暴力団関係者との交際が発覚した田中慶秋法相の進退問題は、内閣改造を経ても支持が上向かない野田政権の傷口を広げた。野田佳彦首相は、田中氏の自発的辞任により決着を図る意向とみられるが、田中氏自身は続投に執着。政権の危機管理対応は相も変わらず後手に回っており、ダメージは増す一方だ。
「ちょっと今、検査の状況を踏まえて検討したい」。首相は19日夕、国会内で記者団から、同日の閣議を欠席して入院した田中氏の進退について聞かれると、こう述べるにとどめ、その後の質問には背を向けて立ち去った。
首相は今月1日、「内閣機能の強化」を名分に今年だけで3度目となる改造に踏み切った。しかし、人事の実態は、苦戦が予想される次期衆院選を前に閣僚未経験者の「滞貨一掃を図った」(民主党関係者)との見方がもっぱらだ。
衆院当選6回の田中氏は、9月の党代表選で首相の推薦人に名を連ね、決起集会では熱弁を振るった。「閣僚の職責に耐えられるのか」と答弁能力などを懸念する声が党内に多かったにもかかわらず、法相として初入閣したのは、論功行賞にほかならない。就任直後から次々と問題が明るみに出るに至り、首相周辺も19日、「今回の人事は失敗だった」と認めざるを得なかった。
さらに痛手となっているのが、ダメージコントロールの欠如だ。暴力団関係者との過去の交際が表面化した11日、藤村修官房長官は記者会見で「(質問は)頭から、週刊誌に書いてあることを全て事実と捉えているようだ」と、ことさら問題視はしない姿勢を強調。政権内に辞任論が広がったのは、田中氏が18日、「公務」を理由に参院決算委員会を欠席したことに野党が激しく反発し、29日召集予定の臨時国会の運営に危機感が強まったからだ。
田中氏更迭となれば首相の任命責任が正面から問われるため、首相サイドは、健康問題も理由に本人が自発的に辞任する形で幕引きを図りたい意向だ。
首相の後見役の藤井裕久元財務相は19日、TBSテレビの番組収録で「本人が自らの判断で最終決着させるべきだ」と語った。もっとも、田中氏は入院先の病院から藤村長官に電話し、「辞任の意向はない」と断言、なお抵抗する構えを見せている。
野党側は、政権の慌てぶりに気勢を上げている。自民党の石破茂幹事長は同じTBSの番組収録で「任命者の責任だ。(国会欠席という)憲法違反を平気でやらせる内閣とは何なんだ」と、首相への追及を強める考えを強調。みんなの党の渡辺喜美代表は会見で「在庫一掃セールは返品お断りが普通だが、早くも返品が出てきてしまった」とやゆした上で、首相に田中氏更迭を要求した。(時事)>
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