新聞で読者が読まない記事の筆頭に「社説」があげられる。しかし混迷する政治に対して新聞が厳しい批判の声をあげる論説の重要性は変わらない。いわば新聞の”顔”が社説なのだから、読者はその論調を見分けることが求められているのではないか。
その思いがあるから、事あるごとに杜父魚ブログでは注目すべき社説を掲載している。グーグル調査でブログの読む記事の追跡調査を毎日行っているが、いつも上位20位の中に各社の社説が位置している。新聞では読まれなくとも、ネット情報で社説が読まれる新しい傾向が生じている。
論評を重視している杜父魚ブログにとっては喜ばしい新傾向といえる。この記事も多くのブログ読者から読まれるだろう。
<<社説:党首会談決裂 これでは政治が動かぬ 毎日新聞社説>>
野田佳彦首相と自民党の安倍晋三総裁、公明党の山口那津男代表による党首会談が行われた。首相は自身が「近いうちに」と約束している衆院解散について自公両党が求める年内解散の確約など時期の明示を拒み、会談は決裂した。
臨時国会は29日に召集される予定だが、このままでは冒頭から与野党激突は不可避な状況だ。首相は早期に民意を問う覚悟をより明確に示すべきだ。衆院「1票の格差」の是正や特例公債法案など、喫緊の課題の決着を主導しなければならない。
安倍総裁が誕生し初の正式な党首会談で政治の歯車は回らなかった。首相は「だらだら延命を図るつもりはない」と述べたものの、解散時期はほとんど踏み込まなかった。これでは輿石東民主党幹事長の「具体的な提案」とのふれこみが偽りだったと言われても仕方あるまい。
首相が8月に「近いうち」の解散を表明してすでに2カ月以上たつ。野田内閣の支持率は低空飛行を続け党内にはなお、年明け以降に衆院解散を先送りすべきだとする声が根強い。実態は首相も身動きが取れないのかもしれない。
だが、このまま国会に突入して果たして成算があるのだろうか。民主党は議員の離党に歯止めがかからず、今や衆院の単独過半数維持も危ぶまれている。
臨時国会で直面するのは放置できないテーマばかりである。最高裁が衆院「1票の格差」に違憲状態の判断を下してから1年半以上も国会は事態を放置してきた。今度は参院も違憲状態のレッドカードを突きつけられている。
赤字国債を発行するため必要な特例公債法案の成立も待ったなしだ。首相は予備費を活用した経済対策の策定を指示したが、付け焼き刃的な対策にどれほど効果があるかは疑問だ。予算執行に支障を来さないよう、公債法案を処理する方がよほど先決のはずだ。
民自公3党合意に盛られた社会保障制度改革国民会議の発足も現状ではままならない。いたずらな引き延ばしは政治の停滞を加速させることを悟るべきだろう。
一方で安倍総裁も年内解散に固執するあまり、最初から審議拒否で臨むような対応を取るべきでない。
むしろ懸案処理に協力することで首相を解散に追い込むのが早道ではないか。首相が提案した予算案と関連法案の一体処理ルールの確立などは検討に値しよう。(毎日)
<<3党党首会談 首相の先送りは無責任だ 産経主張>>
民主、自民、公明の3党党首会談で、野田佳彦首相は衆院解散を「近いうち」と国民に約束したことについて「言葉の重みと責任は自覚している」と述べた。
だが、「それを判断するには環境整備をしなければならない」として特例公債法案成立などの条件を挙げ、解散時期を明示的には伝えなかった。
民主党の輿石東幹事長が前日に「首相の新提案」の見通しを示したことからも発言が注目されたが、進展といえるものは見当たらない。自公両党は「論評に値しない」と反発した。
「決める政治」を実現するためには、首相が年内解散を明示して両党の協力を得なければならなかった。そこに踏み込めなかった首相の対応は無責任そのものだ。
与野党が突っ張りあいを続けていては、内外の懸案を解決できぬまま国政への信用を失墜させるだけだ。その事態を避ける道を3党はなお模索してほしい。
特例公債法案が成立していないため、予算執行を一部抑制する異常事態に陥っているにもかかわらず、政府・与党には打開に向けた強い姿勢がみられなかった。ここにきて首相が特例公債法案成立を条件の一つに挙げるのは、「妨害しているのは野党だ」と責任転嫁を図っているように映る。
首相は社会保障制度改革の国民会議設置や、衆参両院の「一票の格差」を是正する関連法案の成立にも協力を求めた。だが、約束を守らないのに、自公両党が協力できると思っているのか。
首相は会談後、「だらだらと延命しない」と記者団に語った。その言葉通りの実行が求められている。問題は、外国系企業献金や暴力団との交際が発覚した田中慶秋法相の進退だ。
田中氏は18日の参院決算委員会への出席を「公務」を理由に拒んだ。暴力団との交際を追及されるのを避けたとみられ、19日には体調不良を理由に入院した。もはや閣僚を続けられないのは明らかなのに首相は放置している。
党首会談が決裂したのに、首相は臨時国会を召集する方針を表明した。安倍晋三自民党総裁は「審議に入る状況を作る責任は政府にある」と主張し、審議拒否も辞さない構えを示している。
このままでは、国民の利益や国益が損なわれることを野田首相は認識しなければならない。(産経)>
<<委員会欠席 法相を直ちに罷免せよ 東京新聞社説>>
暴力団関係者との交際や外国人献金が発覚した田中慶秋法相が、国会の委員会を欠席した。公務が理由だが、追及逃れは明白だ。もはや閣僚の資格はない。野田佳彦首相は直ちに罷免すべきだ。
九月の民主党代表選で野田氏の再選を支持した旧民社党グループの会長を務める田中氏を閣僚に起用した「論功行賞」人事のつけが回ってきたと言うべきであろう。
田中氏は十九日午前、体調不良を理由に閣議を欠席。病院で診察を受け、そのまま入院した。海外出張などを除いて閣僚の閣議欠席は異例だそうだが、病気なら分からないでもない。
問題は、十八日に開かれた参院決算委員会の閉会中審査を、野党側の出席要求があったにもかかわらず欠席したことだ。公務を理由としているが、当日になって急きょ入れた予定もあるという。
田中氏は、過去に暴力団関係者の宴席に出席したことや、別の暴力団関係者の仲人を務めていたことを認め、政治資金規正法で禁じられている外国人からの政治献金を受けていたことも発覚した。
閉会中審査は、復興予算の流用問題が主なテーマだったが、自民党の委員は田中氏に対し、献金問題も質問すると通告しており、委員会欠席は追及逃れのためと疑われて当然だ。国権の最高機関である国会軽視との誹(そし)りは免れまい。
憲法六三条は、首相と閣僚は「答弁又は説明のため出席を求められたときは、(国会に)出席しなければならない」と、九九条は大臣、国会議員ら公務員の憲法尊重・擁護義務を定めている。
法務行政のトップが、憲法をないがしろにしていいはずがない。田中氏は法相辞任の意向がないことを藤村修官房長官に伝えたという。自発的に辞めないのなら、首相は罷免するのが筋である。
そもそも首相は田中氏の法相、拉致担当相としての資質、能力をどこまで検討して起用したのか。適格性を見極めず、単なる論功行賞だとしたら人事権の乱用だ。首相も任命責任を免れまい。
首相は臨時国会を二十九日に召集するという。赤字国債を発行する特例法案や衆参両院の「一票の格差」是正など、取り組むべき懸案は山積している。
首相は自民、公明両党が求める衆院解散時期の明示を拒み、国会審議への野党側の協力を得るのは難しい状況だが、政権、国会運営の責任を負うのは首相だ。まずは法相を罷免し、懸案処理の環境整備に努めるべきである。(東京)>
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