〔ワシントン=古森義久〕米国の議会と政府が合同で中国の実態を調べ、対中政策に反映させるという「中国に関する議会・政府委員会」はこのほど、2012年度の年次報告を発表した。中国の人権や法の統治について調査した同報告は中国政府が個人の自由の抑圧を多数の分野でなお強め、世界貿易機関(WTO)の規則も大幅な違反を増していると総括した。
同委員会は民主党のシェロッド・ブラウン上院議員と共和党のクリス・スミス下院議員を共同議長とし政府の主要各省の代表を加えた広範な組織で、これまで一年の調査活動の結果をこの報告にまとめた。
同報告はまず世界人権宣言など国際規範で認められた個人の言論や結社の自由が中国ではなお抑圧されているとして、共産党や政府への批判を述べた一般国民や言論人が多数、逮捕されたままの状況を指摘した。同報告は中国の労働者になお自立した労働組合の結成や団体交渉の権利が与えられていないことも強調し、昨年11月の湖南省での炭坑労働者への弾圧などの実例をあげた。
同報告は中国当局がインターネット上での政府の批判も「社会の調和と安定を乱す」という罪状で厳しく摘発する事例を多数あげて、法の統治や公正も無視されていると伝えた。
宗教については同報告は仏教、キリスト教、イスラム教などすべての主要宗派が共産党への届出なしの活動を禁じられ、中国当局はその違反には長期の懲役など厳しい懲罰を加えていると述べた。少数民族については同報告はチベット、ウイグル両民族への弾圧がここ一年また強化されたとして、チベットではその期間に地元住民の45人が抗議のための焼身自殺を図ったと伝えた。
同報告はまた中国領内に逃げてきた北朝鮮難民を中国当局がすべて違法滞在だとして本国に強制送還することを指摘し、国際法にも違反だと非難した。
法の統治の一環として同報告は中国のWTOの規則順守の状況にも不公正貿易慣行や知的所有権侵害を中心に光をあて、「中国は過去5年、WTOの規則を破り、そのシステムをあざけるような行動を続けてきた」と述べ、「中国の国家資本主義は市場経済を対象とするWTOとは合致しない」とまで総括した。
同報告はこうした調査結果を基に米国の政府と議会の両方に中国への多様な対抗や抗議や懲罰の措置をとることを勧告した。
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