百鬼夜行の政界だ。野田首相が不快感を示しているのに、前原誠司国家戦略担当相は重ねて「年明けに解散したら、『近いうち』じゃない」と述べた。
前原発言が正論なだけに、支持率低下で解散ができない首相は迷惑至極と反発し、側近の藤村官房長官は記者会見で「個人的な話だ」と無視してみせた。民主党内で最大のグループを擁する前原氏の凌雲会には策士の仙谷元官房長官が控えている。
重ねての前原氏の年内解散発言で、別の意図つまりは退陣を促そうという「野田降ろし」という見方が浮上している。いずれにせよ野田首相は、絶体絶命の身動きができない淵に追いつめられている。
<「年明けに解散したら、『近いうち』じゃない」-。前原誠司国家戦略担当相のこの正論が政府・民主党内に波紋を広げている。「臨時国会で審議拒否も辞さない構えの自公両党への誘い水」と評価する声もあるにはあるが、多くの議員は前原氏の発言に別の意図をかぎとる。解散できない野田佳彦首相に圧力をかけ、退陣を促そうという「野田降ろし」を意図した発言だという見方だ。
前原氏は22日も神戸市内で記者団に、「私の考えは変わっていない」と強調した。その上で、「(首相が解散の)時期を明示できない気持ちはよくわかる」とも述べた。
先の民自公党首会談で、首相は「近いうち」としてきた解散時期を確約しなかった。「年内解散」を求めてきた自公両党はこれに反発し、臨時国会での特例公債法案の成立に赤信号が灯っている。だからこそ、「首相も内心では年内解散を考えている」というメッセージを発信したと、前原氏は言いたかったようだ。
しかし、前原氏の狙いは首相にまったく理解されなかった。首相は22日、「日本維新の会」の松野頼久国会議員団代表から、「閣僚が解散について言うのはいかがなものか」と水を向けられると、「私もそう思います」と不快感をにじませた。
政府・民主党幹部も前原発言の火消しに追われた。藤村修官房長官は記者会見で「個人的な話だ」と突き放し、輿石東幹事長も「解散は首相が判断するものだ。他の者が言ってもまったく関係ない」と言い放った。
前原氏のアシスト行為は単なる「ありがた迷惑」でしかなかった。
しかも前原氏は凌雲会という党内最大グループを率いる長だ。「ポスト野田」の有力候補でもある。だからこそ「『近いうち』は年内」という当たり前の発言が別の意味に受け止められているのも事実だ。
「総辞職をあおっている。自分が首相になれば衆院選で少しでも民主党を救えると思っているはずだ」
ある凌雲会メンバーはこう語る。年内解散が現実味を増せば、野田首相で衆院選は戦えないとの声に拍車がかかり、首相交代論が強まるとの見立てだ。
「野田降ろし」が吹き荒れれば解散は遠のき、自公両党は反発する。国会は空転し、内閣支持率は一層低下-。首相にとってはまさに悪夢のシナリオだ。(産経)
杜父魚文庫
10800 前原「年内解散」発言は「総辞職狙い」? 古澤襄

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