10935 日本の「第三極」に欠ける共通の基盤  古澤襄

米ウォール・ストリート・ジャーナルは「日本の”第三極”に欠ける共通の基盤」という論評を報じた。米紙が日本の政治状況について詳しく報じるのは珍しいが、とくに第三極について分析したのは初めてではないか。
もっとも「カリスマ的党首を擁する小政党による日本政治の”第三極”勢力結集の舞台装置ができつつある」としながら、「これらの急成長している小政党の間には、イデオロギー的、政治的に大きな差異があり、与党民主党と野党自民党に対抗するに十分な力を持つ連合体に統合できるのかどうか疑問視されている」と結論付けた。
<【東京】総選挙が近づくなか、日本の党派的な争いと立法面での停止状態への国民の不満が強まっており、これを背景に、カリスマ的党首を擁する小政党による日本政治の「第三極」勢力結集の舞台装置ができつつある。
しかし、これらの急成長している小政党の間には、イデオロギー的、政治的に大きな差異があり、与党民主党と野党自民党に対抗するに十分な力を持つ連合体に統合できるのかどうか疑問視されている。
大政党に代わる政党を創出しようとする動きの中心人物は、率直な発言で有名な橋下徹大阪市長だ。ある全国紙の調査によると、橋下氏は「日本のリーダーとして最もふさわしい人物」とされている。同氏率いる政党「日本維新の会」はまだ発足1カ月だが、有権者の支持率は自民党に次ぐ2位で、民主党を上回っており、二大政党に対抗する新しい動きを前進させるとの期待が高まっている。
3年前に政権を奪われた自民党は、野田政権の支持率が発足後の最低に落ち込む中で、12月中の総選挙を実施するために衆議院をすぐに解散するよう野田首相への圧力を高めている。しかし、自民党は現在、世論調査で支持率トップではあるが、国民の支持の波に乗っているわけではない。
日本ではこの3年間に、二大政党を離脱した議員によって半ダースを超える政党が生み出された。政治の専門家や議員らは、次の総選挙では自民党も民主党も過半数を確保できず、これらの小党が無視できない存在になるだろうとみている。
橋下氏は、総選挙に向けて候補者を育てており、全国各地で出馬させたいとしている。一方で、石原慎太郎前東京都知事が計画している党も含めて、新しい政党の多くは橋下氏とその無類の人気にあやかろうとしている。
一方で、同氏も彼らの支援を必要としている。維新の会に所属する衆議院議員は5人にすぎない。同氏の政治的影響力は大阪周辺の関西地域に集中しており、選挙で全国展開するには支援が必要だ。自由市場、小さな政府を掲げる維新の会は政策と選挙戦略で一致するパートナーを見つけるのに苦労している。
保守的な有権者の間でまだ人気がある石原氏は、次の総選挙に出馬するための新党結成を目指して都知事を辞任。主要政党を打倒するための「協力相手」として橋下氏を選んだ。43歳の橋下氏は80代の石原氏との協力を受け入れようとはしているが、石原氏が跳躍台にしようとしている保護貿易主義の政党における老練な政治家たちへの支援は控えている。橋下氏は、この政治家たちはあまりにも高齢で、しかもイデオロギーも異なると述べた。
この2人の人気政治家には政策面での違いもある。例えば、石原氏は断固たる原発支持者であり、橋下氏は2040年までの脱原発を訴えている。
慶応大学の曽根泰教教授は、第三極が重要政策面で妥協すれば、民主党が犯した基本的過ちを繰り返すことになるとの見解を示した。同教授は「民主党は、政権を取るために全く別方向を向いてる人たちを集め、結局分裂・崩壊してしまった」とし、「政策より数合わせを優先させても長続きはしない」と述べた。(ウォール・ストリート・ジャーナル)>
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました