10967 アジアは冷戦なのだ 古森義久

尖閣問題へのアメリカ政府の姿勢についての報告の最後です。アメリカ側の識者から日本をもっと明確に支援すべきだという意見が起きていることのレポートです。
アジアでは中国と他の諸国の間にすでに冷戦が始まっているのだという指摘がおもしろいと思います。
<<尖閣紛争で「中立」の立場をとるのは理不尽、米国内で相次ぐ日本支持の声>>
「現在の米国政府の尖閣問題に対する言明は単に安保条約の条文上の責務を述べているだけで、具体的に何を意味するか分からない。そのため、かえって中国側の軍事攻撃を招きかねない。米国は法の統治や人権の尊重、個人の自由など日本との共通の価値観を強調し、日本防衛の基本方針を明確に述べるべきだ」
これまた極めて強力な日本支持の勧めである。オバマ政権の姿勢への明確な批判だとも言えよう。
<米国が無関係のままではいられない日中の冷戦状態>
第3の意見は前述の大手研究機関AEIの研究員マイケル・オースリン氏が10月4日に大手外交雑誌「フォーリン・ポリシー」に発表した「アジアの冷戦」と題する論文である。
日本の政治研究やアジアの安全保障研究で知られる気鋭の学者オースリン氏は、尖閣紛争の米国にとっての意味について、次のような趣旨のことを述べていた。
「尖閣を巡る日本と中国との紛争では、今回も、尖閣水域でも北京の街路でも人命が失われることはなかった。だが、たった1人の死、たった1つの誤算が世界第2と第3の経済大国を直接の衝突へと追い込む危機は十分にある。その場合、米国は、日本との安全保障条約を守って中国との関係全体を危機にさらすべきかどうかという非常に苦痛の選択を迫られることとなる」
オースリン氏はこの記述ですでに米国が尖閣問題に対し「中立」というように距離を置いたままではいられない、と警告しているのだ。そのうえで中国側の主張に対して次のように述べていた。
「米国から見ても、中国の周辺諸国との数え切れない海洋領有権紛争の実態は、中国が自国の主権を不当に侵害されている側の国だとはどうにも考えられないことを示している」
「今後も日本と中国との間の実際の軍事衝突は避けられるかもしれないが、冷戦のような状態は必ず続いていくだろう。尖閣を巡るいまの摩擦がたとえ 解決されても、日中両国の領有権の争いは続き、日中関係全体はますます冷えきっていくだろう。米国にとっても長期の戦略的な対応が必要となる」
オースリン氏はこのように米国は日中両国の紛争や摩擦に無関係ではいられない、と説くのである。つまりは米国当局が尖閣の領有権について「中立」と繰り返し、いかにも尖閣紛争自体に無関係のままであるかのように振る舞うわけにはいかないのだ、という警告だとも言えよう。
このように米国でも、尖閣問題についていまの現政権のアプローチでは不十分だと主張する声が生まれてきたのである。(終わり)
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました