畏友・渡部亮次郎氏が「頂門の一針」の身辺雑記で<屋山さんと杉浦さん。ともに時事通信出身。若い杉浦さんが維新の会に厳しい>と書いている。
1970年、佐藤内閣の頃、渡部亮次郎氏、屋山太郎氏と私の三人は、清和会担当のベテラン記者として赤坂プリンス・ホテルに屯して、ポスト佐藤を模索した戦友であった。
私ごとでいえば、時事通信社に対しては共同の競争通信社という意識はない。むしろ共同と時事は、敗戦前の同盟通信社からGHQ命令で解体された双子の兄弟という意識があって、昭和四〇年代には共同の先輩たちは、共同と時事の対等合併を模索していた。だから時事の記者には仲間意識がいまでもある。
ローマ特派員から帰朝した屋山氏は、古い政党記者にない斬新な発想をする”もの言い”で最初はへきへきとしたものだが、いつしかその魅力に取り込まれた。民主党が政権交代を果たして鳩山内閣が誕生した時に屋山氏は期待している。
それを「3年3カ月前、半世紀余にわたりほぼ一貫して政権を維持してきた自民党が、なぜ壊滅的敗北を蒙(こうむ)ったか。なぜ308もの議席を民主党に与えたか。国民は、自民党政治が実は官僚政治であることに飽き飽きしたのである」と喝破している。
だがルーピー・ハトヤマのお粗末外交で、屋山氏の期待は裏切られた。それが「ど素人・寺島実郎氏の外交感覚」の厳しい論評になった。期待していただけに裏切られた怒りが大きい。
<鳩山首相の外交ブレーンといわれる寺島実郎・日本総合研究所会長の影響があるのだろう。同氏は文藝春秋10月号に「米中二極化『日本外交』のとるべき道」という論文を書いている。日本は「米国追随」から決別し、真に「自立」しろ、というのである。「日本がまだ『核の傘論』に拘泥していくことは、二十一世紀の世界秩序形成に全く噛(か)み合っていません」ともいう。
ゲーツ国防長官は日本から韓国入りし、核実験やミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮に対処するため、米国が韓国に「核の傘」「通常戦力」「ミサイル防衛(MD)」など「あらゆる種類の軍事力」を提供するとの共同声明を発表した。
寺島氏は韓国が核の傘を求めるのは「二十一世紀の世界秩序に噛み合っていない」というのか。寺島氏の国際情勢認識はまさにど素人の発想で、この理論を現実の外交に持ち込む鳩山首相の外交感覚を疑う>(2009.11.02 Monday name : kajikablog)はいまでも正論だと思っている。
だが屋山氏はいまでも民主党を見捨てていない。<野田氏が政権を取る前に書いた「民主の敵」は、官僚主導政治の実態を暴き、4600の天下り法人に2万8千人が天下りし、そこに12兆円が流れていると指摘している。
民主党の主要なマニフェスト(政権公約)は、「天下りの根絶」「公務員制度の改革」「地域主権の確立」「コンクリートから人へ」などだ。政治改革はこの一手だ、と思ったものだ>としている。
さらに「民主党に期待した国民の思いが消えたわけではない。国民はその思いを誰に託すべきか。政治要求を受け入れようという政党が出現するのは当然で、それが第三極といわれる諸勢力だ」と”第三極”に果たす役割を期待した。
新星のように現れた日本維新の会には遠慮すべきタブーがない。連合を支持母体とする民主党議員の入党を断っている。
TPP参加から憲法改正まで包含した維新八策で、その思想傾向はかなりはっきりした。率いる橋下徹氏は大阪府知事になった瞬間から、教師と職員の規律回復・強化に取り組んだ。この姿勢を高く評価する。自民党も民主党もこの政治の基本を全くわきまえなかった。橋下氏は大阪市長にとどまり、地域主権の一つのモデルを完成した後に国会に出てくるのだろう。これは統治機構改革への重要な手順だ。
呼応して東の横綱、石原慎太郎氏が「太陽の党」を結成し、「統治機構のぶっ壊し」に加わった。17日、太陽の党は解党して日本維新の会に合流した。石原代表、橋下代表代行のコンビである。
総選挙後に登場するであろう安倍晋三内閣の使命も統治機構の改革だ。参院で過半数を得るためにみんなの党などと組んで進めよ。・・・これが屋山氏の所論である。
同じ時事出身の杉浦正章氏は「石原、橋下の野合の合流は“双頭の蛇”」と屋山氏とは異なる論評をした。私の政局観は屋山氏に近いので、杜父魚ブログにはあえて杉浦氏の論評を掲げないが、関心のある方は「頂門の一針」を読んで頂きたい。
http://melma.com/backnumber_108241_5701344/
杜父魚文庫
11029 若い杉浦正章さんが維新の会に厳しい 古澤襄

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