金欠病の日本維新の会が、選挙活動の「ヒト、モノ、カネ」がないまま、風に乗る選挙戦に突入する。これで100人超の当選者を出せば、カネがかからない選挙の新しい前例を作るだろう。労組の支援もなく、大きな支持団体の巨額献金もない。ないないづくしの日本維新の会。
<◇「貯金崩し、400万円上納」 お寒い党支援に不安
日本維新の会が衆院選で擁立する候補の多くは、政治経験のないまま公募に応じた「素人」たちだ。突然の解散に走り出したものの、初めて国政選挙を戦う維新には候補を支える「ヒト、モノ、カネ」の体制はほとんどない。石原慎太郎代表と橋下徹代表代行(大阪市長)の看板だけが頼りの特異な選挙戦に臨む。
「(400万円は)貯金を取り崩して払います。なんとかやっていきます」。17日の維新の公認発表後、藤村修官房長官の対抗馬として大阪7区から出馬する女性(29)は、そう説明した。他党は候補に活動費として公認料を渡すが、維新は逆に公認候補から「広報費」名目で100万円、小選挙区の候補が比例代表に重複立候補する場合は供託金300万円を徴収する。
その割に党のサポート態勢はお寒いばかりだ。注目選挙区に立つ彼女の選挙区が決まったのは15日。これまで選挙の経験はなく、選挙事務所さえ決まっていない。「投票まで1カ月もないので、秘書は決めるかどうか……。右も左も分かりません」と不安を訴える。
今月3、4日、大阪市内の研修施設で研修会があり、第1次公募で国政に擁立できると判断された合格者約150人が参加した。候補者が知りたいはずの選挙実務の説明は乏しく、参加者は講義後、維新所属の国会議員秘書らを囲み、質問するしかなかった。研修に参加した男性は「これではカルチャーセンターだ」といらだちをあらわにした。
維新の公認候補は20日現在で56人。公募選考の合格者は1次、2次合わせて200人を超える。しかし、擁立だけが先行する促成栽培の様相は否めない。
背景には維新の資金不足がある。10年分の政治資金収支報告書によると、大阪維新の会(10年4月設立)の収入は6791万円。206億円の民主党、152億円の自民党とはけたが異なる。
維新幹部の一人は今年7月、公募作業について「解散が先延ばしされるようなら遅らせる」と語っていた。選挙準備を早め、公認から選挙までの期間が長くなればそれだけ資金がかかる。維新にははじめから短期決戦の風頼りで勝負する選択肢しかなかった。(毎日)>
杜父魚文庫
11049 「ヒト、モノ、カネ」がないままの日本維新の会 古澤襄

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