これまで日本は平和憲法の発想によって思考を停止して、世界の現実を直視する力を失って、ひたすら外国と摩擦を生じるのを恐れ、平和国家ぶって得意になってきた。
私はもう20年も前から尖閣諸島に、陸上自衛隊の1コ中隊を交替で駐屯させるべきだと、論じてきた。
中国は海軍の拡張に乗り出したばかりだった。日本の経済協力と投資に餓えていたから、口先で抗議しても、既成事実として認めざるをえなかったはずだった。
私はやがて中国が軍事力を増したら、尖閣諸島をかならず盗りにくると予想した。
防衛省は中国が傍若無人に振る舞うために、離島奪還のための戦闘訓練と装備の調達を、あわててはじめた。来年度予算ではじめて、水陸両用車をたった4輌でしかないが、購入することになった。
ところが、わが自衛隊にはもし尖閣諸島が奪われた場合に、奪還する能力がまったくない。
陸上自衛隊の実力部隊として、那覇に1000人程度の第15旅団がいるだけだ。沖縄本島から与那国島まで、514キロにわたって先島が連なっているのに、宮古島にレーダ基地があるだけで、この間に実戦部隊はゼロだ。
旅団といっても、諸外国なら連隊に当たる人員数だ。連隊だったら連隊長が佐官で足りるのに、将官のポストづくりのために、旅団となっている。連隊も大隊の規模でしかないのにもかかわらず、佐官のポストづくりのために、連隊となっている。
ついこの間まで、日本社会党が上陸戦闘のための水陸両用車が攻撃的な兵器だといったために、認められなかった。同じことが、航空自衛隊が今日でも戦闘機として飛ばしているF4Jについても、あてはまった。
F4にせっかく爆撃装置がついていたのに、「侵略的だから」といって、採用にあたって外された。そこで、アメリカ国防省では〃J〃が、ジャパンのJではなく、「欠陥商品(ジャンキー)のJ」だと、嘲っていた。
どうして自由陣営において、アメリカに次ぐ第2位の経済大国である日本が、尖閣諸島という小島をめぐって日中が武力衝突した場合に、まず独力で守ることができないのか。はじめからアメリカ軍にすべてを頼るのでは、アメリカの世論が納得しない。
それでもアメリカ軍に縋るほかないが、アメリカは尖閣諸島に限定された侵攻の場合には、日本が独力で対応し、衝突が拡大する場合は、日米安保条約を適用するといっている。
日本国民の多くが日本が「平和国家」であることを誇ってきたが、他人委(まか)せの贅沢を見せびらかして、自慢するのと同じように浅はかなことだ。軽蔑しか、招かない。
他人委せの平和を誇ることはできない。日本国民に平和を愛していると、言える資格はまったくない。
戦後、アメリカの絶対的な軍事保護が、日本人から国家意識を失わせるのに当たって、決定的な力を持った。日本はどの独立国であっても持っているべき国家精神を、捨ててしまった。
もし、中国の海上民兵である漁民が、魚釣島に大挙上陸して、事前に島にあがったわが警察官か、海上保安官が人質となり、人民解放軍が自国民を保護すると称して出動したら、どうするのか。いまからでも、武装要員を駐留させるべきである。
杜父魚文庫
11067 いますぐ尖閣諸島に陸上自衛隊を駐屯させるべき 加瀬英明

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