日本の新聞を読んでいると、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスとの停戦合意が、エジプトが仲介した外交勝利と美化した論調が目立つ。”アラブの春”といった情緒的な論調と軌をいつにしている点が気になる。
イスラエルとの停戦発効を喜ぶパレスチナ人たちだが、束の間の停戦合意になる危惧がある。この一週間、軍事衝突によって少なくとも160人の犠牲者を出したが、ハマスが発射したロケット弾はエジプトと対立関係にあるイランの軍事協力によるものである。
もし停戦合意が崩れれば、ハマスはエジプトよりもイランへの依存度を傾斜するに違いない。
仏AFPが入手した停戦合意文書にはイスラエル側に「(ガザ地区への)侵入や個人を標的とすることを含め、陸空海での全ての敵対行為を停止する」よう求め、パレスチナ側の各派には「ロケット弾攻撃および境界付近での全ての攻撃」をやめるよう求めている。
中東外交の主導権が米国からエジプトに移ったなどという情緒的論調は欧米ではみられない。むしろ停戦合意が崩れれば、イラン・シリア包囲網の強化を目指す欧米の外交政策にも影響を与えると薄氷を踏む思いでみている。
イランの技術協力で作られたイラン製「ファジル5」(射程75キロ)を模したロケット弾が、イスラエルの心臓部・テルアビブに落下させたことで、イランは”勝利”を誇示した。一方、イスラエルはロケット弾を打ち落とすアイアンドームをテルアビブ近郊に配備したことで、ほとんどを無力化させたと誇示している。
これによって予想されるイランのロケット攻撃も恐れる必要はない、といったイスラエルの論調も出ている。
日本が遠くから情緒的な報道を繰り返すよりも、イスラエルと中東各国の対立がさらに複雑化している冷静な現状分析が必要な時期だと言いたい。
<【11月22日 AFP】イスラエルとイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)は停戦に合意し、現地時間21日午後7時(日本時間22日午前4時)に停戦が発効した。
これにより、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)とその周辺で約1週間続き、少なくとも160人の死者を出した軍事衝突は一旦終息した。ガザ地区は停戦発効の予定時間から数分間は暗く、人けもなかったが、その後すぐに多くの人が家を出て「勝利だ」などと言いながら停戦を喜んだ。
停戦は仲介役を務めたエジプトのムハンマド・カメル・アムル(Mohammed Kamel Amr)外相が同国首都カイロ(Cairo)で開いたヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官との共同記者会見で発表した。クリントン国務長官は停戦合意に歓迎の意を表し、「中東地域にとって重要な局面だ」と述べた。また、「米国は今後、今回の進展を確立するため地域の関係国と連携していく」と加えた。
イスラエル首相府は声明で、ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は平和に機会を与える用意があると発表。「先ほど、ネタニヤフ首相はバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領と話し、エジプトによる停戦の提案に機会を与え、情勢の安定化と鎮静化に機会を与えるというオバマ大統領の提言を受け入れた」と述べた。
AFPがコピーを入手した合意文書は、イスラエル側に「(ガザ地区への)侵入や個人を標的とすることを含め、陸空海での全ての敵対行為を停止する」よう求め、パレスチナ側の各派には「ロケット弾攻撃および境界付近での全ての攻撃」をやめるよう求めている。
停戦が成立した場合、イスラエルは24時間以内に、ガザ地区との境界に設けた複数の検問所の封鎖を解除し、人や物資の移動を可能にする手続きを開始する必要がある。(AFP)>
杜父魚文庫
コメント