貿易路の衰退も一因だが、重大な貿易相手国の崩壊の道連れになった。
<黄文雄・石平『中国の終わりの始まり』(徳間書店)>
歴史家、文明批評家である黄文雄氏と、元中国人、石平氏との劇談。
ふたりとも中国批判の先端に立つ論客だが、歯に衣を着せぬ物言いがえんえんと続いて、多くの読者には一種快感がもたらされる。
対談では十年以内に『反日のツケ』によって、中国は崩壊するという予測。つまり「中華の法則」に従えば、大破局が見えており、中国共産党定刻の崩壊が視野にはいったとする。
黄氏はベネチアの終わりと中国から聞こえ始めた断末魔の声が似ているとし、その理由はいまの中国は「通商国家」であり、改革開放以後の中国は通商しか生きる道がなく、その貿易圏を喪失すると、かの国家は崩壊に到ると、いささか乱暴な結論かと思いきや、そうではなく、次のたしかな理由を挙げている。
「ベネチア共和国の冨は狭い人口島だけにとどまらず、海上の広大なネットワークにありました。そのベネチアが没落したのは地中海貿易から大航海時代という時代の変化があったこと、さらには1618年から北方のドイツで30年にもわたる宗教戦争が起きたことが原因でした。これによって通商相手のドイツ地方が荒廃したためベネチアの商品が売れなくなってしまった。貿易相手の没落の道連れになった」
その状況に中国が似てきた、というわけだ。
このあと二人の対談テーマは多岐に亘るが、やがて最後に中国は分裂にいたるだろう、と予想しつつ、石平氏が次のようにまとめる。
「分裂すると言うことは、すなわち中華思想を捨てるということなんです。普通の国々になる。そうなることが、中国人にとっても一番幸せでしょう。ただし、中国人にそういう智慧があるか、どうか」にかかっているという。
各頁の下段に珍しい写真がついていて、すべてを通読しても愉しい本に仕上がった。
(読者の声)韓国大統領選挙、保守対左派の対決。
11月27日からはじまった韓国大統領選挙戦は保守の朴槿恵(セヌリ党)と 左派・文在寅(民主党)候補の激しい鍔競り合いだ。直近の世論調査(11月25日)で「朴」の支持率は46%、「文」は41%で誤差範囲内の接戦だ。その3日前(11月22日)まで支持率は「朴」(40%)脱政党をかかげた無党派の安哲秀(ソウル大学教授、25%)「文」(24%)の順だった。2,3位が結束して候補一本化すれば、支持率合計は朴槿恵を上回る。
安、文両人は候補一本化を交渉した。歴代大統領選挙で一本化した統一候補が当選した。だが交渉は決裂して、政党のバックがない安哲秀は23日立候補を断念した。
「安」の候補辞退の反射効果で「文」の支持率は急騰した。しかし「朴」の支持率も上昇して依然優位を保った。
統一候補となれば支持率が上昇すると思われたが、単独候補決定の効果は期待以下だ。候補一本化でなく、「安」が一方的に立候補を放棄したせいだ。一本化交渉でむきだされた両者の敵対感は残る。「安」支持票のうち5割は「文」に移行、、2割は「朴」支持にシフトして、残る3割は浮動票になったと見られる。この浮動票が当落を左右する。
「文」陣営は「安」支持者の取り込みに全力をあげている。保守と中高年世代を地盤とする朴槿恵の支持率は始終40%台で推移しているが、その壁を乗り越えるのは至難だ。
文在寅は左派勢力と若い世代が支持する。選挙の焦点は朴正熙と盧武鉉政権の功罪をめぐる論争だ。
中傷誹謗合戦が激化しており、朴(朴正熙の長女)は独裁者の跡継ぎ、文(盧大統領元秘書室長)は失敗した左派政権の共犯者ときめつける泥仕合になった。朴槿恵は朴政権で弾圧された犠牲者の怨念を宥めるのに懸命で、その救済補償法案を進めている。文在寅は盧政権の対北宥和にたいする保守の不信反感の解消におおわらわだ。
総人口の半数を占める首都圏、それに釜山・嶺南地域の得票が選挙の天王山になった。
首都圏は左派と若い世代が多数だ。釜山出身の文在寅は保守の牙城だった同地域の得票に死活をかけている。歴代大統領選挙で統一候補が当選するジンクスがあるが、その一方、一本化に失敗した候補は例外なく敗北した。大統領選挙は白熱の対決になった。
米国は左派政権の出現を警戒している。いまのところ12月19日投票で史上初の女性大統領が当選 する可能性が高い。(池東旭、在ソウル)
(宮崎正弘のコメント)韓国大統領選挙、現場中継風で、非常に有益でした。有り難う御座います。
杜父魚文庫
11130 ベネチア共和国の末期に酷似してきた通商国家としての中国 宮崎正弘

コメント
宮崎正弘さん
はじめまして最近の韓国を見ていると自分の方から中国にすりよってる感じなのですがどうなんでしょうか?アメリカとは、決別と言う事ですか?