アメリカは日本の総選挙に強い関心を抱いている。米ウォール・ストリート・ジャーナルは6日発表されたメデイアの世論調査を詳細に報じて、「自民党が地滑り的勝利の情勢にある」と驚きをもって伝えた。
自民党が優位に選挙戦をたたかっているとの見方は、これまで米メデイアの共通した分析だったが、過半数に至るには公明党との連立が必要となるという見解に立ってきた。
したがって多くの日本メデイアが「自民党が単独で過半数の可能性」と報じたことが意外性をもって米紙に伝わったことになる。
しかし自民党が圧勝の勢いにあるのは否定しないが、単独過半数はあくまで”可能性”であろう。しかも参院においては自民党は過半数を得ていない。また民主党とは部分連合を組むことがあっても、選挙後に大連立が簡単には成立するとは思えない。
やはり来年夏の参院選で自民党が過半数を獲得できるかに、政局の安定がかかっている。それまでは安倍政権が誕生しても、予算編成と予算の成立以外には、安倍政権らしい政策を打ち出し、実行するのは不可能であろう。
<【東京】6日に公表された国内メディアによる複数の世論調査によると、自民党は16日投開票の第46回衆院選で単独過半数(241議席)を確保し、政権の座を奪回する勢いのようだ。そうなれば、安全保障面でタカ派、金融政策面ではハト派の自民党の安倍晋三総裁が、首相の座に返り咲く公算だ。
4日に衆院選が公示されて以来初めてとなる今回の調査では、安倍氏率いる自民党が今月16日の選挙で480議席中、単独で過半数を獲得する見通しであることが示された。対照的に、野田佳彦首相率いる民主党は惨敗に終わり、議席数は現在の230議席の半分以下にとどまるもようであることが調査で示された。
有権者の約30~50%はまだ投票先の政党を決めていない状態で、今後情勢が変わる可能性がある。その一方で、今回の調査結果では、これまでの調査と比べて自民党への支持が大幅に高まっていることが驚きを持って受け止められている。これまでの大半の調査では、自民党が議席の多くを確保するものの、過半数に至るには公明党との連立が必要となる公算が大きいことが示されていた。
選挙研究を専門とする埼玉大学の松本正生教授は「ここ数年、選挙は一過性のイベントになり、無党派層は流れに乗る傾向がある」と言い、「結果、(世論調査の示すように)自民党が大勝する可能性は高いだろう」との見方を示した。
今回の調査結果は、民主党が政権に就いての3年間をめぐり有権者の幻滅が広がっていることを示唆している。この3年間は特に消費税の引き上げをめぐって意見が二転三転するとともに、首相が3人入れ替わることになった。
自民党が大勝することになれば、首相経験者の安倍氏に金融緩和や安全保障問題が委ねられる公算が大きい。ここ数週間は安倍氏の一段の金融緩和要請に市場が揺さぶられている。また、同氏は防衛費の拡大と自衛隊に対する平和憲法のたがを緩めることを公約に掲げている。
原発賛成の自民党に対する支持はまた、昨年の福島第1原発事故を受けた脱原発をめぐる協議以上に、数十年間デフレに見舞われた日本経済のテコ入れがいかに有権者の最優先事項となっているかを示しているとも言えそうだ。
今回の調査ではさらに、民主党と自民党に代わる政党としての位置づけを狙う、新たに結成された日本維新の会の所属議員の占める議席が現在の11議席から議席を伸ばし、3倍に増える可能性も示唆された。しかし、石原慎太郎・前東京都知事と橋下徹・大阪市長が中心となって先月急きょ結成された同党は、全国的な支持獲得には苦戦しているようだ。
また、嘉田由紀子・滋賀県知事が代表を務め、政界の有力者、小沢一郎氏率いる国民の生活が第一が合流した日本未来の党は現在の62議席のうち十数議席の確保にとどまるもようだ。
読売新聞が電話で実施したこの聞き取り調査では、自民党は単独で衆院議席のうち半数に当たる240議席以上を確保する見通しで、公明党を合わせると議席は300議席を上回る可能性がある。読売新聞は、10万人を超える全国の有権者を対象に世論調査を行い、全国総支局などの取材を加味して序盤の情勢を探ったとしている。
また、日経新聞が約10万人の有権者を対象に実施した同様な調査では、自民党の230議席獲得は容易だとみられている。さらに、朝日新聞と共同通信の調査でも同様な結果が示されている。
一方、読売新聞と日経新聞、朝日新聞、共同通信の調査全部で、民主党は議席数を半分以上失いかねないとみられており、惨敗となる見通しが示されている。(ウォール・ストリート・ジャーナル)>
杜父魚文庫
11151 「自民党が地滑り的勝利の情勢にある」と米紙 古澤襄

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