11166 北ミサイルの延期示唆と官房長官発言の不適切さ  古澤襄

朝鮮中央通信は、事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験について「時期を調整する問題を慎重に検討している」と語り、延期することを示唆した。
北朝鮮の朝鮮宇宙空間技術委員会報道官が8日、「発射のための準備作業を最終段階で進めている。その過程で一連の事情が生じた」と発言した。この発言をめぐって、単なる技術上の問題なのか、国際社会からの厳しい反応を考慮したのか、判断が分かれている。
いずれにせよ「さっさと月曜日(10日)に上げてくれるといいんですけど」との藤村官房長官の願いとは異なる方向にあるのは明らかだ。むしろ技術的な問題でミサイル発射が遅れているとしたら、不完全な状況下で発射が強行される可能性があるので、ミサイルの飛行コースにある日本や韓国にとって不安感を増幅することになりかねない。
あらためて藤村発言の軽率さが問われている。産経新聞は9日の紙面「主張」で、この問題を取り上げている。
<北朝鮮は、10日から今月22日の間に「人工衛星を打ち上げる」として予告している事実上のミサイルの発射について「一連の事情が生じたため、打ち上げ時期を調整する問題を慎重に検討している」とする談話を発表し、今回の発射を先送りする可能性を示唆しました。
これは、北朝鮮の宇宙空間技術委員会が、8日付けの報道官談話として、9日未明、国営メディアを通じて発表したものです。
談話は、北朝鮮が10日から今月22日の間に「人工衛星を打ち上げる」として予告している事実上の長距離弾道ミサイルの発射について、「打ち上げの準備は最終段階にある」とする一方で、「準備の過程で一連の事情が生じたため、われわれの科学者や技術者は、打ち上げ時期を調整する問題を慎重に検討している」として、今回の発射を先送りする可能性を示唆しました。
「一連の事情」が具体的に何を指すのかは言及していませんが、発射の予告期間に入る直前になって、北朝鮮がこうした発表を行うのは異例のことです。
今回の談話は、ことし4月に続く発射失敗は何としても避けたい北朝鮮指導部が、技術的な難しさも指摘される冬場の厳しい寒さのなかでの発射準備を慎重に進めていることをうかがわせるとともに、発射予告に強く反発している日本やアメリカ、韓国などに重ねて揺さぶりをかけるねらいもあるとみられます。(NHK)>
<やはりこの内閣に国を委ねるのは無理だったのか、と改めて思わざるを得ない事態だ。
藤村修官房長官が地元の大阪府吹田市で、北朝鮮が発射予告している長距離弾道ミサイルについて、「さっさと月曜日(10日)に上げてくれるといいんですけど」と発言したことだ。自民党などは即時辞任を要求している。
日本をはじめ国際社会が協力して北の暴挙を何とか制止しようとし、発射すれば新たな制裁を科そうと協議しているさなかに、まるで早期発射を期待していると受け取られかねない。
官房長官は内閣の要として政策調整を行い、危機管理上も重要な役回りを担う。今回の発言は緊張感に欠け、安保認識を疑う。適格性を欠いている。
藤村氏や野田佳彦首相が「舌足らずだった」と釈明しても、通用するものではなかろう。
藤村氏は4日の衆院選公示後、7日に初めて地元入りした。問題発言は、再び選挙中に地元入りするかとの記者団の質問に答えたもので、藤村氏は「北のミサイル次第だ。(地元に)入りたいに決まっている」とも語った。
藤村氏は選挙中は官邸で留守を預かるが、7日は野田首相の遊説が東京都内だったので地元入りを決めたという。だが、北朝鮮の発射予告は10~22日だ。10日までの間もミサイル対処で万全の措置を講じなければならない以上、不適切と言わざるを得ない。
考えなければならないのは、民主党政権が国家の役割を軽視してきた結果、国民の生命・安全がおろそかにされてきたことだ。それは、失言などによって資質や責任感を疑われた閣僚らが問責決議を可決され、辞任に追い込まれる例が相次いだことにも示されている。
一川保夫元防衛相が「安保に関しては素人」と述べたことや、鳩山由紀夫元首相が米軍普天間飛行場移設問題を迷走させた揚げ句、「学べば学ぶほど海兵隊の抑止力が分かった」と語ったことには、安全保障がこうも軽んじられているのかと唖然(あぜん)とさせられた。
鉢呂吉雄元経済産業相の「放射能をうつすぞ」発言など、意識のたるみや職責への認識の希薄さを露呈するものもあった。
藤村氏の発言は、国益を害してきた民主党の本質的な問題を改めて浮き彫りにしたともいえる。
(産経)>
杜父魚文庫

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