北朝鮮の平安北道鉄山郡東倉里のミサイル発射基地で繰り広げられた”発射延期騒動”は「推理小説」のような面がある。
ひとつの特徴は米国防総省やCIA情報が目立って少ない点だ。米情報は偵察衛星により撮影された写真の分析による。平壌市内のミサイル工場で長距離ミサイルの1段目、2段目、3段目ロケットを列車に積み込み、平安北道鉄山郡東倉里のミサイル発射基地に運搬したところまでは、偵察衛星でくまなく追跡している。
しかし東倉里のミサイル発射基地では、1段目、2段目、3段目ロケットが天幕に覆われて、その中で行われている組み立て作業は偵察衛星では窺うことが出来ない。
何か不具合が生じていると分かったのは、北朝鮮が9日朝「一連の事情により、われわれの科学者、技術者らは『光明星3号』2号機打ち上げの時期を調整する問題を、慎重に検討している」と発表したからだ。
それからは韓国の情報当局の人的な情報が主役となった。悪名高き韓国のKCIA情報は金大中・盧武鉉政権時代に改組されて昔日の情報力がないが、それでも蓄積された人的情報力は残している。
いまのところ北朝鮮がいう発射延期の「一連の事情」とは、「3段目ロケットの異常」という情報は韓国筋によるものだが、確度は高いとみられる。3段目ロケットとは、ミサイル発射後、1段目、2段目が順次切り離され、最期に飛翔する部分である。この2段目と3段目の切り離しで不具合が生じているというのが、韓国政府の推理となっている。
天幕の中の出来事だから、これも確定的な話ではない。
韓国のロケット専門家は「組み立ての過程でミスがあった可能性は小さいが、マイナス10-20度という寒さの中で作業が行われたのであれば、想定外の問題が発生したことも考えられる」という。これまで北朝鮮がミサイルを発射した時期は4月から8月の間だったことによる。
しかし別のロケット専門家は「長距離弾道ミサイルは気温がマイナス50度の成層圏を通過するため、低温や圧力には耐えられるように設計されている」と、この説に疑問を呈している。東倉里発射場がある平安北道鉄山郡の今月8日朝の最低気温はマイナス17.5度だった。
また「長距離弾道ミサイルは通常、失敗に備えて2基1組で製造されるが、性能実験などのため各ロケットごとにさらに予備が作られる」ともいわれている。性能実験で3段目ロケットの不具合が発見されたのなら、3段目を解体して予備の3段目を装着し性能実験をすればよい。それが順調に作動すると判断すれば、22日以前に発射も可能となる。
これも「推理小説」の範囲だから、定かな話ではない。しかし予備の3段目も不具合が解消されないとあれば、年内の発射は不可能であろう。北朝鮮の威信は大きく傷つく。天幕の中を覗くことが出来ない米国、日本、韓国は、「推理小説」を重ねながら北朝鮮の出方を注視するしかない。いずれにしても人騒がせな北朝鮮、藤村官房長官ならずとも「さっさと打ち上げてくれ」と言いたくなる。
<北朝鮮は先月中旬、平壌市内のミサイル工場で長距離ミサイル「銀河3号(人工衛星『光明星3号』)」の1段目、2段目、3段目ロケットを列車に積み込み、平安北道鉄山郡東倉里のミサイル発射基地に運搬した。
直後に幕を張ってミサイルの組み立て作業を行ってきたが、9日早朝になって突然「一連の事情により、われわれの科学者、技術者らは『光明星3号』2号機打ち上げの時期を調整する問題を、慎重に検討している」と発表した。
また、これに先立ち8日午後、3段目ロケットが東倉里の基地に運び込まれる様子が偵察衛星により撮影された。北朝鮮が言及した「一連の事情」とは、どうやらこの3段目ロケットの異常だったようだ。
この結果、もし北朝鮮が3段目ロケットの技術的問題を解決できた場合、北朝鮮が以前から言及していた発射期間の今月22日より前に、ミサイルが発射される可能性は一層高くなった。
■組み立て点検の際に新しい問題点を発見か
北朝鮮が当初、10~22日に発射を予告していた長距離ミサイル『銀河3号』は、1段目・2段目・3段目ロケットで構成されている。1・2段目は燃焼が終われば、ミサイルから落下するように設計されている。
韓国の国立研究機関に所属するロケット専門家は「組み立ての過程でミスがあった可能性は小さいが、マイナス10-20度という寒さの中で作業が行われたのであれば、想定外の問題が発生したことも考えられる」と語る。これまで北朝鮮がミサイルを発射した時期は4月から8月の間だった。
1段目・2段目・3段目ロケット組み立て後の点検段階で、3段目の異常が新たに明らかになった可能性もある。韓国航空宇宙研究院・羅老号発射推進団の趙光来(チョ・グァンレ)団長は「組み立てを終えた後も、通信や誘導、制御を行う部分やエンジンなどの推進システムを制御する高圧ガス系統などについて、欠陥がないか改めて点検するはずだが、この時にそれまで分からなかった問題点を発見したのかもしれない」と述べた。
複数のロケット専門家は「寒さは発射にそれほど大きな障害にはならない」と見ている。東倉里発射場がある平安北道鉄山郡の今月8日朝の最低気温はマイナス17.5度だった。
別の国立研究所のロケット専門家は「長距離弾道ミサイルは気温がマイナス50度の成層圏を通過するため、低温や圧力には耐えられるように設計されている」と述べた。ちなみに韓国の宇宙ロケット「羅老号」の打ち上げの条件は気温がマイナス10度からプラス35度の間とされているが、これは作業条件などを考慮して決められたものだという。
■性能実験のために別の推進体も製造か
今回東倉里の発射場に運ばれた新しい3段目ロケットは、すでに組み立ては終了しているものとみられる。韓国政府関係者は「長距離弾道ミサイルは通常、失敗に備えて2基1組で製造されるが、性能実験などのため各ロケットごとにさらに予備が作られる」と述べた。
複数の専門家は「北朝鮮が新しい3段目ロケットを順調に組み立てた場合、早ければ3日以内に発射実験が可能」と予測している。北朝鮮が最初に定めた発射期間は22日までだが、この日までに発射を行うことは、技術的には問題ないようだ。(朝鮮日報)>
杜父魚文庫
11185 推理で振り回される米日韓 古澤襄

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