亡友の石川真澄氏(朝日)と選挙・戦争論を論じたことがある。「選挙運動にかかわり、選挙指導する者は、戦史を読み戦争技術を学んでおく必要がある」と私。「それは言えるが、参謀本部は科学的知見、数量的分析が必要だろう。精神論だけでは勝てない」と石川氏。
ともに昭和ヒトケタ生まれ。戦争の時代を旧制中学で過ごし、敗戦の足音を聞きながら、陸軍士官学校や海軍兵学校を目指した経験がある。思考経路が参謀型という共通項があったから、敗戦後も政治を数量で分析することで、よく議論している。
戦後生まれは、日教組教育の洗礼をたっぷり受けた世代だから、戦争という言葉を聞いただけで”軍国主義”と毛嫌いする。だが人の一生は己と闘い、他と闘う。闘いが男の定めと割り切って生きるしかない。
いまどき流行らない選挙・戦争論なのだが、自民党が圧勝し、民主党が完敗したこんどの衆院選を、戦争技術論で検証してみないことには、次の戦争となる来夏の参院選で勝利はおぼつかない。格好の検証材料がある。産経新聞が三重県の戦績を要領よく分析している。一地域の戦績だが、全国の選挙区でも同じ傾向が生まれている筈である。
また毎日新聞は全国の比例得票数を集計した結果に基づいて、票を減らした自民党が、当選者数で圧勝した構造分析を行った。一言でいえば、12政党の乱立で民主党と第三極勢力が非自民票を食い合った結果、相対的に自民党候補の当選する小選挙区が増え、自民党の獲得議席を押し上げたと結論付けている。参謀本部型の分析といえる。
さて、これらの分析、戦争技術を各党の選挙対策者が生かすことが出来るだろうか。敗戦後の日本のように思考停止のまま参院選を迎えれば、また自民党の大勝を許しかねない。
第三極勢力が力を結集できずに不振の戦績で終わったのは、大阪維新の会が石原氏の太陽の党と合流したことに最大の原因がある。みんなの党が反発し、小沢新党との合流も不発に終わった。
野田首相が第三極勢力の結集を防ぐ狙いから、年内解散にサイを投げた効果はあったが、それが自民党を大きく利することになってしまった。戦争下手の最たるものであろう。松下政経塾の優等生かもしれないが、父親が自衛官の割に戦争の仕方を知らない。演説が上手でも戦争の仕方を知らなければ、選挙向きの党首とはいえない。
<自民圧勝で政権交代となった衆院選。県内では戦後最低の投票率61・29%を記録する中、注目された民主党と自民党の対決は自民が5議席を得て民主を3議席も上回り、平成21年8月にあった前回選挙で民主の半数の3議席だった劣勢を挽回し雪辱を果たした。
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選挙区では、自民候補が獲得した票は約38万5000票で前回比約3万8000票減で、民主候補の獲得票は約34万4000票で前回比約27万7000票減となった。投票率低下で、民主が大幅減となる一方、得票減を小幅にとどめた自民が大きく浮き出る格好となった。この結果、前回、民主が4議席、自民が1議席を獲得したが、今回は自民が3議席、民主が2議席と逆転し勢力地図を塗り変えることにつながった。
各選挙区の票の動きでは、1区は自民の川崎二郎氏が前回比で約9000票の目減りにとどまり、投票率が下がる中、実質的な上積みを図り2期ぶりに選挙区で勝利。日本維新の会の松田直久氏は5万4970票を集めたが、市長だった実績がいかせず津市でも川崎氏に敗れ、第三極の風を受けることはできなかった。民主の橋本千晶氏は抜群の知名度を誇った中井洽元法相に比べ約8万9000票減らし、党県連として課題が残った。
2区は民主の中川正春氏が約5万8000票減らしたが、逃げ切った。自民の島田佳和氏は前回の自民候補に比べ約1万8000票減らしたが、比例代表東海ブロックで復活当選した。
3区は民主の岡田克也氏が前回に比べ約4万7000票減らし党への逆風の影響を受けたが、地力の強さを見せつけた。桜井氏は前回の自民の候補と比べ約8000票減となったが、比例で議席を得た。
前回、初めて比例で救われた4区の自民、田村憲久氏は、今回、前回に比べ約1500票増やし、2期ぶりに選挙区で当選した。民主の森本哲生氏は約3万6000票と大幅に減らし党への逆風をまともに受けた格好となり、比例でも復活できなかった。
5区は自民の三ツ矢憲生氏が前回比約4000票減だったが民主の藤田大助氏が約4万6000票と大きく目減りさせたことから、早々と当選を決めることが出来た。
今回は、選挙区と比例での復活当選者を合わせると、前回、民主は6議席、自民は3議席だったが、自民が平成8年の小選挙区比例代表並立制選挙導入以来最多の5議席だった。
県庁であった記者会見にのぞんだ自民の水谷隆県連幹事長は「前回の衆院選以後、民主は参院議員を含め8人の国会議員で組織を固めてきたが、自民は衆院の3人だけでつらかった。今回の逆転で来年の参院選に向け攻勢を強めたい」と意気軒昂(いきけんこう)。一方、民主の高橋千秋県連選対委員長は「政権運営と内部のゴタゴタへの批判があった。野党に戻るので影響も大きい。参院選も厳しい戦いになる」と選挙総括した。(産経)>
<16日投開票された第46回衆院選は、自民党が単独で半数を大きく超える294議席(小選挙区237、比例代表57)を獲得して圧勝し、3年前に失った政権を取り戻した。ただ、同様に296議席を獲得して大勝した05年衆院選の比例は77議席で、比例に限れば今回は20議席も少なく、119議席で大敗した09年の比例55議席をわずかに2議席上回るにとどまった。
全国の比例得票数を集計したところ、自民党は1662万票で、05年の2588万票を大きく下回り、09年の1881万票にも及ばなかった。得票率も27.6%で09年の26.7%とほぼ変わらなかった。投票率が09年より約10ポイント低かったことも影響しているが、全国的に自民党支持が広がったとは言い難い。
自民党の小選挙区候補の得票数を合計すると2564万票で、大敗した09年から165万票減っている。12政党の乱立で民主党と第三極勢力が非自民票を食い合った結果、相対的に自民党候補の当選する小選挙区が増え、自民党の獲得議席を押し上げた形だ。
大敗した民主党の獲得議席は57議席(小選挙区27、比例30)で、現在の民主党が結成された98年以降最低だった05年の113議席(小選挙区52、比例61)の約半数まで落ち込んだ。比例の得票は962万票で、09年の2984万票から約3分の1に激減。旧民主党時代に挑んだ96年衆院選の894万票に近い水準となった。
今回初めて国政選挙に挑戦した日本維新の会は54議席(小選挙区14、比例40)を獲得。比例の得票は1226万票で民主党を大きく上回った。みんなの党は比例で524万票と前回の1.7倍に得票を伸ばした。(毎日)>
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