二年前の十二月三十日に「本格的な政治決戦は2012年になるだろう。菅政権とはいわないが、民主党政権にとって2011年中に基本的な政策変更を図らないと沈没船のまま海底を漂うことになりかねない」と予告したが、その通りとなった。
当時の杜父魚ブログの読者は、毎日一万人余り。いまでは三万一〇〇〇人に増えている。
政治記事の要諦は「事実を正確に書き」さらに「先見性ある予測」をすることにある。それに従えば、二〇一三年参院選は民主党が敗北し、二大政党の一角が衆参で崩れると予告したい。
その原因は、来夏の参院選で民主党は二〇〇七年参院選で大勝した議員たちが改選期を迎えるからである。参院議員は衆院と違って六年間の任期中には選挙がない。常在戦場の衆院議員と違って、緊張感に欠けるから基本的には選挙に弱い。
一人区で追い風に乗って当選した民主党は苦戦を免れない。
選挙区選挙が二〇一三年参院選の帰趨を決めるとみているが、同時に比例区選挙にも注目している。安倍自民党は比例区で、桜井よしこ氏のような知名度のある候補者を擁立するであろう。過去、二回の参院選で自民党は比例区の得票が漸減している。それに歯止めをかけるために、知名度のある比例区の候補者擁立に力を入れている。
対する民主党は自治労や日教組などの労組頼りの選挙から脱しきれていない。労働組合の組織率が20%を切る中で、この選挙手法では限界がある。加えて維新の党、みんなの党など第三極からの挟撃を受ける。
参院選はすでに半年後に迫った。二〇〇七年参院選で六〇議席を獲得して大勝した民主党は、大きく議席を減らすことを予告しておきたい。
<杜父魚ブログには毎日、一万人を越える読者がアクセスしてくれるが、私の方はその読者傾向を毎日、グーグル検索で調べるのが楽しみ。一年間を通じて一番よく読まれたのは屋山太郎氏の「ど素人・寺島実郎氏の外交感覚」。また十二月二十九日の一日にかぎれば、私の「仙谷官房長官が頼る二人の民間人ブレーン」がトップでよく読まれている。
鳩山外交にもっとも影響を与えたと巷間伝えられた寺島実郎氏と、陰の総理大臣といわれる仙谷由人氏のブレーン中前忠と篠原令の両氏が期せずして読者の関心を集めた点が面白い。旧聞になるが安倍晋三氏のブレーンについて「注目される安倍ブレーンの三氏」(2006・9・8)を書いたことがある。
中西輝政京大教授、伊藤哲夫日本政策センター所長、八木秀次高崎経済大学教授の三氏を取り上げ、安倍氏は国家理念を重視する保守イデオロギー派と位置付けた。
世間では菅・仙谷VS小沢の対立に関心が集まっている。新聞・テレビもそれ一色。しかし菅、小沢氏には、それを支える学者グループが見当たらない。学者なんて象牙の塔の存在で、下手な口出しをされても実学の政治の世界では厄介ものだと思っているのかもしれない。
だがワシントンから古森義久氏が伝えてきているように、米国ではシンクタンクで様々な政策論が戦わせられていて、それが米政権の政策に影響を与えている。ハーバード大学やプリストン大学の教授が共和、民主両党の大統領の政権交代でホワイトハウスに入ってくるから、外交路線の変化が外からも見える。また政策に厚みがある。
その点では日本政治は世界政治のローカル、貧弱さが覆い隠せない。とくに菅政権には思いつきの政策が目立っている。政治主導が空回りして、官僚の政策提言が出てこない。どの道、短命政権だと霞ヶ関官僚たちは、お手並み拝見を決め込んでいる。
岸内閣の当時だが、反主流派の池田勇人氏は不遇の時代に下村治氏らエコノミストや大蔵官僚系議員たちとともに「所得倍増」のもととなる政策構想を練り上げている。日本で本格的な政策集団を作ったのは池田氏といっていい。60年安保の三年前の1957年、自らの政策集団・派閥である宏池会を結成している。
ひと握りの若い政治家の能力などはタカが知れている。人生経験も政治経験も未熟だから、三宅久之氏から一喝されると縮み上がる。やはり野党時代に国の基本政策である外交・安全保障政策や国家財政の政策をなおざりにしてきたまま、政権を手中にしたツケが回ってきたと言わざるを得ない。
このままだと民主党は政権の座から滑り墜ちたら、再登場する可能性は極めて低いと思う。それは二大政党制を志向する日本政治にとって不幸なことである。本格的な政治決戦は2012年になるだろう。菅政権とはいわないが、民主党政権にとって2011年中に基本的な政策変更を図らないと沈没船のまま海底を漂うことになりかねない。(2010.12.30 Thursday: 杜父魚ブログ)>
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11321 二〇一二年の政治決戦を二年前に予告 古澤襄

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