習近平が広東省経済特区の視察とは対照的に農民農村農業の「三農」に挑む。中国がかかえる難題の一つは「三農」(農村、農民、農業問題)である。
李克強は十八回党大会後の最初の訪問地を江西省九江とした。九江へ水運に恵まれて古くから拓けた交通の要衝、水滸伝の舞台でもある。
12月27日、小雨の中、李克強は同省省長などを伴ってマイクロバスで移動し、九江の工業開発区ならびに農民の住宅を訪問した。
農民らとの「対話集会」も用意されており、「月収入2000元しかないのに住居費に1000元もかかる。最大の問題は賃金ばかりか、戸籍の問題であり、住居の貧困、家族団らんの場がない、就学の問題。そして看病など問題ばかりだ」という農民の訴えに耳を傾けたそうな。
実は江西省九江と聞いて、ピンと来たことがある。
九江の南およそ40キロは共青団の牙城、共青城市がある。団派が凄まじい力を入れて開発しているのが、共青城市特別工業団地、近未来30万都市を目指して、インフラ整備と企業誘致に余念がない。しかも、この共青城市郊外には広大は墓地がある。
胡耀邦の陵墓である。
李克強はこうやって団派のシンボル都市を訪問した上、農民の味方であることを演出した。多くのテレビカメラを伴った視察となった。
他方、習近平が総書記就任後最初の視察を広東省各都市としたのは経済発展の駄目押し、さらなる繁栄の確保のため、部品メーカーの蝟集する東莞、仏山、恵州、中山、珠海などを精力的に視察した。
なかでも関心を集めたのは深セン視察だった。
深センには86歳になる習近平の母親、斉心が暮らしているが、習は夫人と姉二人、弟の習遠平、娘の習明沢をともなって、この母を見舞ったというのが表向きの理由だ。
しかも母親は習一族にビジネスから手を引け、保有する不動産と株券を処分せよ、と訓戒を垂れたという情報が行き交った。
しかも深センには習近平の姉二人が経営する深せん達為集団が建設した商業ビルがあり、じつは「幽霊屋敷」(テナントが一軒も埋まっていない)を見たのだ。
杜父魚文庫
11330 李克強・次期首相の最初の訪問地は江西省九江の農家 宮崎正弘

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