11372 金貨は悪貨を駆逐する   宮崎正弘

ブレトンウッズ体制の変質の影で・・・。金(ゴールド)をめぐる動きが活発化している。
世界一の投機家といわれるジョージ・ソロスが大量に金塊を購入し、金鉱山企業に投資し始めている。春からの動きで、商品市場関係者やファンド筋が注目している。
というのも日本のマスコミには伝わらないが、国際情勢の裏側では「金本位復帰論」が経済論壇、投資サークル、通貨ヘッジ・ファンドの世界を猖獗している。
草の根民主主義やティパーティなど米国保守派の間で金本位復帰論は「常識化」している。この事態の深刻さを認識していないのは国際政治の蚊帳の外に置かれた日本くらいではないのか。
欧米のみならず中東から印度、中国にかけて目端の利く投資アドバイザーらは「十年以内に世界通貨体制の基軸から米ドルとユーロが降りて、金、プラチナ通貨が主流となり、金本位制度が復活する」と言っている。
はじめは漣(さざなみ)ていどの噂だったが、いまやゴールドショップは長い列、欧米の通貨は中国や印度やブラジルなど新興工業国家の外貨準備から徐々に外されているのだ。しかるに日本では金本位制復帰論など「荒唐無稽」「アナクロ」「バカも休み休み言え」と受け取られ、目下の話題は「インフレ率2%が目標」という安倍次期政権の標語である。
尖閣諸島を中国軍が攻撃しても米国が守ってくれると考えるのは一種信仰に近い平和ぼけであるように、ペーパーマネーによる国際通貨体制の崩壊というシナリオも考えられない事態ではない。
シュメールやメソポタミアからの世界史を振り返っても、通貨の興亡は悲劇と喜劇を演じたが、永遠不滅に変わらない価値は金(ゴールド)だった。ヒッタイト、カルタゴ、ローマの金備蓄をみよ。
 ▼金本位制復帰の準備がない日本
2008年のリーマン・ショック以後、金価格は連騰、高騰を演じ、一オンス=1700ドル台からいずれ2000ドル台をうかがう気配となっている。
そのうえ世界中で産金ブーム、金消費は旺盛である。日本には中国から「押し買い」が目立つ。ごっそりと金地金が中国へ輸出されている。
中国は産金と金消費で世界一だが、国家備蓄としての金も世界四位に食い込んで米・独・仏を追い、英国を抜いた。ドイツは日本と同様に金備蓄ゼロだったが静かに着実にため込んだうえ最近は米国フォート・ノックスに預けた金塊の返還を求めている。
オランダも、この列に加わったが、日本は米国に信頼を置いて預けたまま、しかも国家意思として増加させる気配がない。
世界経済論壇ではロバート・ゼーリック前世銀総裁が「金本位復帰は選択肢のひとつ」と明言し、ノーベル経済学者のロバート・マンデル教授が金本位理論を唱えている。
具体的にどうするか詳細なプランは不透明だが、金とリンクした新札、金と兌換できる米国国債の売り出し等、多角的なことが考えられる。列強はひそかに金本位制度へ復帰を画策しており、戦後の世界経済システムを米ドル基軸と決めたブレトンウッズ体制が大きく揺らぎはじめた。(「北国新聞」「北風抄」、12月24日からの再録です)
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