11385 ”辰巳天井”に沸き立つ東京株式市場   古澤襄

大発会を迎えた4日の東京株式市場は、円安ドル高が進行し、全面高となって沸き立った。”辰巳天井”と市場関係者は、一段高に期待している。
景気は”気”から、とも言う。百万の理屈よりも気分で動くのが株価だから、それだけに”経済は生きもの”。”政界の一寸先は闇”の政治の格言と並ぶ。
”辰巳天井”は、株式市場関係者の間の格言。干支(えと)の辰の年と翌年の巳年は、十二支の中でも株価の上昇率が高いとされる。事実、株価が史上最高値の3万8915円をつけた平成元年も巳年だった。
もっとも昭和25年以降の巳年の平均株価上昇率は4・8%とそれほど高くない。むしろ昨年の辰年の方の平均上昇率は、28・0%と十二支の中で断トツに高い。
こうなると理屈ではない。終わった辰年よりも始まった巳年の方が「駆け上がる年の2年目」と囃し立て、辰と巳を重ねた”辰巳天井”がまかり通る。外人投資家たちは、そろそろ利食いをしたいところだろうが、下手に売り急ぐと大損するから、動くに動けない。
だが、私にとっては、お江戸・深川の”辰巳芸者”の方が馴染みがある。江戸情緒は人情に厚い粋な職人達が好んだ辰巳芸者から生まれた。
薄化粧で身なりは地味な鼠色系統、冬でも足袋を履かず素足のまま、当時男のものだった羽織を引っ掛け座敷に上がり、男っぽい喋り方。
気風がよくて情に厚く、芸は売っても色は売らない心意気が自慢という辰巳芸者は、粋の権化として江戸で非常に人気があった。大衆小説には必ずといっていいほど辰巳芸者が出てくる。
それに較べて昨今は、中国や韓国から流れ込んだ”売春婦”たちが、チョイの間稼ぎで日本の阿呆な男ども相手に荒稼ぎ。粋もへったくれもあったものではない。「お江戸の昔が懐かしい」と”辰巳天井”が思わぬ脱線をしてしまった。
年明け最初の取引である大発会を迎えた4日の東京株式市場は、米国で減税の期限切れと歳出削減が重なる「財政の崖」が土壇場で回避されたことを受けて円安ドル高が進行し、全面高となった。日経平均株価の終値は前年末比292円93銭高の1万688円11銭で、1年10カ月ぶりに1万600円台を回復し、東日本大震災前の水準に戻した。
東証1部の値上がり銘柄数は全体の9割超を占める1553で、時価総額は306兆5016億円と2011年3月11日以来、300兆円の大台を回復した。
「財政の崖」の回避で米経済の先行き懸念が後退したとの見方が広がったほか、東京外国為替市場の円相場が4日夕には1ドル=88円台に突入するなど円安が加速し、企業の業績回復期待を後押しした。
平均株価は一時、前年末比339円05銭高の1万734円23銭まで上昇。主力株のトヨタ自動車が一時、約4年3カ月ぶりの高値を付けたほか、ホンダやパナソニックなど輸出関連株が上昇し、メガバンクなど金融株も買われた。
昨年までの東京市場は、震災による部品のサプライチェーン(供給網)の寸断、歴史的な円高、中国での反日運動、欧州債務不安など企業を取り巻く環境悪化に伴い投資意欲も低下。消去法的に「安全資産」とされる日本国債などに資金は流れた。
しかし、国内の政権交代をきっかけに「負のサイクル」が逆回転し、円安株高の進行や米財政問題の回避など海外リスクが改善し始め、外国人投資家を中心に、リスク性資産である株式へ資金がシフトした。ただ「株式市場には過熱感が出ている」(大手証券)など先行きに慎重な見方も根強い。
(産経)>
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