次期財務長官にウォール街とは無縁の堅物を起用。ルービン、ポールソン、ガイトナーと続いてきた歴代財務長官で「辣腕」筋は全部ウォール街からの猛者である。現長官のガイトナーはルービンの弟子筋。親中派。ポールソンは、あるいは前中国大使の丹羽よりも親中派だった。
オバマ政権は、こんどジェ一コブ・ルー(通称ジャック・ルー)なる無名の堅物を次期財務長官に充てるという。これは強欲資本主義との訣別を意味するか?
ルーはワシントンの玄人筋では意外にしられた存在で黒子に徹して、国務次官から予算局長。おもに議会調整を受け持ち、とりわけ政府債務上限引き上げの議会工作を担当してきた。
ウォール街との接点は過去にシティグループで働いたことがある程度。ただしシティでは、ウェルス・マネジメント・ファンド(WMF)を担当した。
ジェイコブ・ルーの父親はポーランドからの移民。ルーの信奉するのは正統ユダヤ教である。ルーはハーバード大学からジョージ・タウン大学に学び、最初は電力関係の弁護士。政治の縁は薄かったとされる。
「われわれが99%」という運動は民主、共和の党派性を越えて、富裕層への反逆。とくに議会がウォール街の思惑に添って数々の規制緩和を実行し、富裕層が富んでも貧乏人は救われない政治への抗議だった。
ウォール街はオバマ有利と見るや、オバマに献金し、その前は共和党を袖にしてもクリントンに献金し、ウォール街の代弁者を財務省に送り込んできた。
ジュニア・ブッシュ時代の初期、スノーとオニールというウォール街に無縁の実業家を財務長官に充てたが、業績はサッパリ、それでブッシュはいきなりポールソンをウォール街から引っ張ってきて経済を活性化させた。
▼この財務長官で「財政の崖」を乗り切るのは難しいのではないか
オバマが直面しているのは「財政の崖」の続編である。年初にはかろうじて議会を説得して乗り切った危機も時限立法のため3月1日が期限である。
もう一度、「財政の崖」に直面するばかりか、もう一つの難題は政府債務上限の改定(現在16兆3940億ドル以上の赤字債権を発効できない)である。こちらのほうは2月中旬に「締め切り」がやってくる。こういうときに堅物ルーが長官となって、はたして財政危機を乗り越えることが出来るのか。まして正統ユダヤ教信者ともなれば原理原則重視、融通が利かない堅物が多い。
共和党はオバマの財政法案に反対の構えで、ライス国連大使の国務長官人事を葬り、つぎはヘーゲル国防長官とケリー国務長官の指名承認公聴会でも反対論が沸き上がり波乱含みである。
ましてや財務長官となると? 米国政治に不安材料がまたひとつ増えた。
(読者の声)現在のデフレの元凶は小泉純一郎・竹中平蔵の両氏にあると考えます。竹中平蔵氏が日銀総裁に就任した暁には安倍晋三総理提唱の経済活性化策への最大の反抗勢力となり、計画は頓挫すると考えます。
残念ながら安倍晋三総理は竹中平蔵氏ぞっこんの様ですね。先生のお考えをお聞かせ頂けましたら幸いです。(KT生、長崎)
(宮崎正弘のコメント)竹中教授が日銀総裁というのは観測気球、本命は別にいると推測しています。アベノミックスは期待が高いだけに、これから失望に変わっていくと相乗的な心理悪化が伴いますので、近未来はまだまだ計測不能です。
杜父魚文庫
11430 え、ジャック・ルーって誰だ? 宮崎正弘

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