11431 色あせたハンティントンの『文明の衝突』   古澤襄

サミュエル・フィリップス・ハンティントン(Samuel Phillips Huntington, 1927年4月18日 – 2008年12月24日)は、アメリカ合衆国の国際政治学者。コロンビア大学「戦争と平和」研究所副所長を経てハーバード大学教授。1986年から1987年まで、アメリカ政治学会会長を務めた。
彼の研究領域は政軍関係論、比較政治学、国際政治学などに及び、軍事的プロフェッショナリズム、発展途上国における民主化、冷戦後の世界秩序での文明の衝突の研究業績を残している・・・ウイキペデイアの一節。
ハンティントンの『文明の衝突』は日本でも広く読まれ、イラク戦争はキリスト教世界とイスラム教世界の文明の衝突だと論じられた。
いまになってみればリチャード・チェイニー米副大統領、ポール・ウォルフォウィッツ 国防副長官、ジョン・ボルトン国務次官補ら新保守主義(ネオコンサバティズム)がブッシュ政権下で、同時多発テロ以降の強硬政策を推し進め、戦争で勝利したもののイラク統治政策で失敗した評価が定まった。ネオコンはブッシュ政権の途中で退場している。
イラク戦争に批判的だったフランスからは、エマニュエル・トッドのような若手の文明研究家が、ハンティントンの国家観が古いと批判している。トッドは『文明の衝突』は全くの妄想とまでコキ下ろした。
ハンティントンが亡くなって五年の歳月が去った。イラクから米軍が撤退を開始し、アフガン撤退も規模をめぐってまだ結論が出ていない。冷戦後の世界を文明にアイデンティティを求める諸国家の対立として描いた『文明の衝突』は、いまでは色あせたようにみえる。
杜父魚文庫

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