米中関係はどうなるのか。アメリカの専門家たちの分析の紹介です。日本ビジネスプレス「国際激流と日本」からです。
<米中が余儀なくされる「ぎこちない抱擁」 悲観的にならざるを得ない米中関係の見通し>
・米国の対中政策の目標は、中国の言動と世界観に変化を起こさせ、米国や国際社会全般にとって好ましい方向へ動かすことだ。そのためには戦略的な思 考と軍事力が必要になる。
中国人民解放軍は過去20年以上、毎年、国防費の顕著な増額を得て、世界でも最も強力なミサイル戦力や潜水艦戦力を発展させてき た。有事には米軍部隊の接近を阻止し、平時でも近隣諸国を威嚇することができる。米軍は海や空でもっと戦力を強化しないと、この中国軍への均衡が取れなく なる。
・米中間の経済関係は両国に利益をもたらす。中国からの安い輸入製品は米国の消費者を利するし、米国の企業は中国での生産活動で利益をあげる。
米国 政府は自国の債券を中国側に購入させることで巨額の資金を得る。中国はその結果、国内経済の高度成長を可能にして、国民の不満を抑えることができる。
■中国がたどる「穏やかなシナリオ」と「悲観的なシナリオ」
以上のような現状から今後はどうなっていくのか。
ブルーメンソール氏らは中国の今後の動向として次のような3つのシナリオを提起した。中国共産党がこれからの中国の国民一般の不安や期待をどうさばけるか、によって、中国という国家の命運は大きく左右されることになる、というのだ。その進路は大別すると2種類あるという。
(1)穏やかで、円滑なシナリオ
中国共産党政権は国内の経済と社会の圧力への対処に成功していく。経済面では従来の輸出全面依存型から国内経済の活性化を進め、情報の規制も緩和し、市民の自由もいくらか増す。
米国にとってこのシナリオは中国がグローバルな経済システムへのより深い融合と、より自由な政治制度の発展させることを意 味する。
その結果、中国は対外的にも法の統治や紛争の平和的解決をより尊重し、国際的な規則を順守するようになる。軍事力も脅威や威嚇よりも平和と安定の保持に使おうとする。米国は中国がこの方向へ進めば、さらにその加速のために種々の支援をすることになる。
(2)より悲観的なシナリオ
中国共産党は現在までとあまり変わらない経済への広範な介入を続け、資源の誤った配分、金融の抑圧が生産性を抑えることを継続させる。
政治面での自由化は進めず、知識を基礎とする情報関連分野の発展が阻まれる。政治や経済の基本的な改革はないため、経済成長も停滞するが、恐慌は起きない。
ただし指導部は国内の不満を抑えるために、対外的な姿勢を高圧的、攻勢的にする。その結果、米国への安全保障上のチャレンジは増す。日本に対しても尖閣諸島を巡る緊迫を強め、国内経済がさらに悪化すれば、国民の反日の感情をさらにあおる。(つづく)
杜父魚文庫
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