11533 あれから8ヶ月、中国資本のハリウッド進出は頓挫中  宮崎正弘

二十世紀フォックスもソニー・ピクチャーも映画制作の合意には到らず。2012年5月、全米最大の映画館チェーンAMCエンターテイン社を買収した謎の中国企業に世界の注目が集まった。「大連万達集団」である。
いくつかの出来事が重複したため、米国はとくに神経質にみていた。
第一に大連では薄煕来事件に連座して、薄最大のスポンサーだった大連実徳集団が、いきなり倒産した。大連万達も同様な政治銘柄と受け取られた。
前者「大連実徳集団」のCEO=徐明は、派手な自家用飛行機を乗り回し、薄が大連市長時代からの腰巾着、薄が遼寧省長、商工部長、重慶市書記と出世するごとに商圏をひろげてきた。
一方の「大連万達集団」は、四川省出身の王健林が不動産売買からみを起こし、一代にして気づきあげたビジネス王国だが、資産4200億円。
南京の大報恩寺にポンと私財120億円を寄付したり、かとおもえば中国最大の豪華ヨット「皇宮」を所有する成金であり、評判は芳しくない。 
第二に米国でもチャン・ツー・ィーの名誉毀損裁判が行われることが決まり、スキャンダルの多いハリウッドにふさわしい中国版醜聞にも関心が高まった。チャン・ツー・ィーはハリウッドにも名が知られた国際女優だが、薄煕来との「関係」がタブロイド判のトップ記事を飾っていた。(米国の他、香港でも名誉毀損の裁判が行われている)
拙著『中国を動かす百人』(双葉社)でも、この大連万達集団に関して詳述しているが、米国が脅威視したのは映画館チェーンの買収ではなく、中国企業のハリウッド映画進出の野心である。
ニューヨークタイムズ(1月20日付け)が直近の様相をつたえた。
大連万達集団の王健林は「映画制作の協同プロジェクトを持ちかけ、二十世紀フォックスとは現実に詳しい話し合いを続けてきたが、いまも話はひとつもまとまっていない」。
 
ソニー・ピクチャーにも映画制作の話が持ち込まれ、「3-6億ドル出資の用意がある」と王健林が提示したが、具体的にどのような映画分野に興味があるのか、あるいは具体的シナリオという段取りになると空を掴むような話となり、とても「実現までには時間がかかる」(別の言葉で言うと『中国企業とは組めない』)。
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました