昨年のことになるが、市川団十郎氏の会が京都の天龍寺で催されて、歌舞伎について短い挨拶をした。この会のために、美しい庭が幻想的にライトアップされた。庭に面して、龍の大きな国宝の屏風絵がある。
私は冒頭で、屏風の龍の爪が3本しかないことに触れた。中国の龍の爪は5本あるが、朝鮮をはじめとする属国は4本、日本は幸いなことに華夷秩序のもとで夷狄として蔑まれていたから、3本しか許されなかった。もし爪が4本あったら、日本の優れた独特な伝統文化がなかったと、指摘した。
3000年の中国史は、専制と争乱が相次いだ人災史であって、人が私利私欲によって動かされ、公の精神が培われることがなかった。
習近平体制が第18回中国共産党大会によって、発足した。今日の中国も興亡を繰り返してきた、中華帝国であるのに変わりがない。
中国は同じ穴の貉(むじな)である太子党と、共産青年同盟団の貴族たちによる、およそ300ファミリーの盗族集団によって、支配されている。
習共産党総書記兼中央軍事委員会主席は就任すると、「近代以降、中華民族は最も危険な時を迎えたが、中国共産党の創立後は団結して、民族の偉大な復興を成し遂げた」と述べ、「軍事闘争の準備を最重要視する方針を堅持」すると、訴えた。
中国共産党は、1921年に結党された。私は中国共産党が2021年に、創立100周年を祝うことはできないと、信じている。
1988年にソ連共産党第19回大会がモスクワのクレムリンにおいて、今回の第18回中国共産党大会と同じように、盛大に開催された。翌年に「ベルリンの壁」が倒壊し、その2年後にソ連が消滅した。今回の人民大会堂と、あの時のクレムリンの大ホールの光景が、何とよく似ていたことか。
ソ連を葬ったのは、「グラスノスチ」(言論の自由化)だった。今回の第18回中国共産党大会も、外にひろがる中国社会の現実と大きく乖離していた。
中国では解放経済が行われてから、人民の考えが多様化して、自分の意見をもつようになっている。人民が特権階級による腐敗や、官憲の横暴や、貧富の格差が拡大していることに対して、不満を昂じさせている。
民衆による暴動が、頻発している。中国側の発表によっても、2008年には全国で13万件の暴動が発生したが、2009年に18万件に達し、その後さらに増え続けている。
中国では、最高幹部をはじめ誰1人として、共産主義イデオロギーを信じていない。高度経済発展の時代が終わって、もはや高度成長に頼ることができない。そのかわりに、政権は中華ナショナリズムを支えとして、煽るようになっている。「中華民族の偉大な復興」を強調するのは、そのためだ。
国外へ向かって膨張政策をとって、人民の鬱憤(うっぷん)をそらせようとしている。
中国が尖閣諸島をめぐって、日本をさかんに威嚇しているのは、中国が大規模な軍拡を続けて、軍事力が肥大化したためではない。現体制の基盤が、脆弱化したからだ。
中国の権力者は力によって政権が生まれたから、力のみを信奉している。それに、為政者にそろって盗癖があるから、尖閣を盗みにくるのは当然のことだ。
日本国民は、目を醒(さ)まさなければならない。
杜父魚文庫
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