11616 殺人狂「イスラム武装勢力」  平井修一

「イスラム武装勢力」とは何者か。イスラム原理主義をかたったテロリスト、海賊、山賊、匪賊の類ではないかと小生は思うが、ほとんど欧米諸国民の理解を超えた狂気の集団のような気がする。
日経(2013/1/19)の「きょうのことば」には「イスラム武装勢力 不安定な国で勢力拡大」とこう紹介している――
<▽…イスラム教徒のうち、宗教、政治、経済面などの目的達成のため、武力闘争、テロや誘拐・殺人などを行うグループを指す。政治的に不安定な国に入り込んで勢力を拡大させてきた。
▽…預言者ムハンマドが唱えた根本的な宗教原則に立ち返ることを主張する「原理主義者」と同一視されることも多く、米国やイスラエルを敵視する言動も目立つが、宗教・政治よりも、経済的な利益を求めて身代金目的の誘拐などを繰り返すグループもいる。
若年人口の多いイスラム諸国では、高い失業率や汚職のまん延など社会の腐敗に不満を持つ若者の受け皿ともなっている。
▽…1980年代、アフガニスタンに侵攻したソ連と戦うためにアラブ諸国から義勇兵が集結。その後、国際テロ組織「アルカイダ」に発展した>
「正義と思えば何でもできる」と殺しまくる狂信者のイスラム武装勢力は、イスラム過激派、イスラム原理主義と親類みたいなものだろう。治安を悪化させて欧米的な自由、民主、人権、法治の価値観、体制の崩壊を目論んでいる。
イスラム武装勢力の資金源は、世界の治安が悪くなることで原油高になって潤う産油国だろう。
<米国務省の内部文書によれば、米国の努力にもかかわらず、アルカイダやタリバン等の過激組織に対して数百万ドルの資金が流れ込んでいる。クリントン長官の電報によれば、サウディ及び湾岸諸国(政府と言う意味ではない)からのものでである。
サウディ政府等に対して、サウディ等からの資金がテロ活動の最大の資金源であり、その資金源を厳しく取り締まるようにとの米国の働きかけは必ずしも功を奏していず、それを説得するのに常に困難を感じているという>(ニューヨークタイムス2010年12月06日)
テロがイスラム武装勢力のビジネスであり、産油国からの資金や誘拐による身代金が生活の糧であり、自分たちと家族、一族の生活が懸かっているからテロはやまないだろう。欧米諸国はこれからも悩まされ続けるのである。
主な活動圏と外務省による直近の安全情報を調べてみた。
■アフガニスタン
ソ連のアフガン侵攻に対して義勇兵が結集。その後アルカイダに発展。
 ・報道によると、2013年1月27日、カブール市内で仏人とみられる外国人1人が武装した4人組に拉致された模様。
 ・アフガニスタンにおいては、外国人のほか、援助関係機関のアフガニスタン人スタッフや警備員、企業関係者、政府関係者、ジャーナリスト等が誘拐被害に遭うケースが多く発生している。
■パキスタン
ソ連のアフガン侵攻に対して義勇兵が結集。その後アルカイダに発展。
 ・報道によれば、2013年1月10日、パキスタン南西部のバロチスタン州の州都クエッタにあるビリヤード場において、連続して爆発が発生し、少なくとも81人が死亡、120人以上が負傷した。
死傷者の多くはシーア派の住民であり、スンニ派過激勢力が犯行を認めたとの報道もある。また、クエッタでは同日、準軍事組織の車両の付近で爆発が発生し、12人が死亡、47人が負傷し、地元の反政府勢力が犯行を認めた模様。
 ・さらに、10日、パキスタン北部のハイバル・パフトゥンハー(KP)州スワート郡にあるイスラム宗教施設で爆発が発生し、少なくとも22人が死亡、70人が負傷した。この爆発の原因は不明だが、警察が調べたところ爆弾の痕跡が発見されたとの報道もある。
■イラク
米国の占領に反発するテロ行為が多発。
 ・イラクでは,地域によって脅威の度合いは異なるものの、イラク政府機関、治安組織、宗教関連施設、民間人等に対する攻撃や爆弾テロ、宗派対立をあおろうとする攻撃等が頻繁に発生しており、依然として予断を許さない情勢が継続している。
2013年1月3日、バービル県ムサイブ(バグダッドの南方約60kmに所在)で宗教行事「アルバイーン」を終えたシーア派巡礼者を狙ったと見られる自動車爆弾を使用した自爆テロが発生し、少なくとも27人が死亡、60人が負傷した。また、同日、バグダッド東部のニューバグダッド地区でもシーア派巡礼者を狙ったと見られる路肩爆弾が爆発し、8人が負傷した。
■ソマリア
過激派組織が一時首都を占拠。
 ・2013年1月24日、オーストラリア外務貿易省はソマリアの渡航情報を更新し、ソマリランドのハルゲイサで武装勢力が外国人の誘拐を計画している旨警告した。
 ・ソマリアでは、2012年9月末、ケニア軍を中心とするアフリカ連合部隊が、ソマリアのイスラム武装組織「アル・シャバーブ(AS)」の拠点であったソマリア南部の港町キスマヨを制圧したが、引き続きASによると見られるテロ攻撃や拉致・誘拐事件がソマリア国内及び周辺国で発生している。
■アルジェリア
1990年代にアルジェリアでテロ行為を繰り返した組織が拡散・流入。
 ・アルジェリアでは、2013年1月16日、アルジェリア南東部のイリジ県イナメナスにおいて、武装勢力により外国人が襲撃・拘束される事案が発生し、日本人10人を含む外国人多数が死亡した。また、同月20日、犯行グループとみられるイスラム原理主義武装組織が声明を発表し、マリにおける戦争に参加している諸国に対しさらなる攻撃を行うと述べた。
 ・報道によれば、2013年1月27日夜(現地時間)、アルジェリア北部のブイラ県において、ガス・パイプラインの警備を担当する自警団の宿営所が、武装勢力により襲撃され、自警団員3人が死亡、7人が負傷した。
■モーリタニア
1990年代にアルジェリアでテロ行為を繰り返した組織が拡散・流入。
 ・2013年1月9日、隣国マリ北部で、マリ国軍とイスラム原理主義武装集団の戦闘が発生。同11日、マリ暫定政府からの要請を受けたフランスが軍を派遣し、同武装集団への攻撃を開始した。戦禍の拡大等に伴う影響がモーリタニア側に及ぶ恐れが危惧されている。
 ・アルジェリア南部のモーリタニア国境付近には、西サハラ難民キャンプがあり、2011年10月、人道支援を行うNGOメンバーが誘拐される事件も発生している。
また、2013年1月、アルジェリア南東部のイリジ州イナメナスにおいて、武装勢力により日本人を含む外国人多数が拘束される事案が発生した。モーリタニア側に武装集団が流入し、治安が悪化する可能性もある。
■マリ
1990年代にアルジェリアでテロ行為を繰り返した組織が拡散・流入。
 ・2013年1月9日、マリ北部のコナ(Konna)近郊でイスラム原理主義武装集団とマリ国軍の戦闘が発生し、11日、マリ暫定政府からの要請を受けたフランスは軍の派遣を発表し、同武装集団への攻撃を開始した。この戦闘により、14日時点で,仏軍兵士1人(仏政府発表)、マリ国軍兵士11人(マリ政府発表)が死亡、イスラム原理主義武装集団側には100人以上の死者が出たとの報道もある。
 ・マリにおける治安情勢の悪化に鑑み、現地時間2013年1月27日をもって、在マリ日本国大使館を一時閉館した。
■ニジェール
1990年代にアルジェリアでテロ行為を繰り返した組織が拡散・流入。
 ・2012年10月14日午後11時(現地時間)頃、ニジェール南部のマラディ州ダコロにおいて、医療援助団体の関係者6人が正体不明の武装集団によって誘拐された。ニジェール当局により、犯人がマリとの国境方面へ逃走したことが確認されている。
被害者のうち5人はニジェール人、1人はチャド人とのことだが、武装集団の本来のターゲットは西欧人であったとの見方もある。
 ・ニジェールはマリと国境を接しており、現在マリの北部地域は反政府武装組織「アザワド地方解放国民運動(MNLA)」、イスラム原理主義反政府武装組織「アンサール・ディーン」等の強い影響下にあり、北アフリカで広く活動する「マグレブ諸国のアルカーイダ」(AQIM)の活動もみられる。
また、マリに対するECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)の軍事介入及び同介入を支持するフランスの動きに対し、上述の反政府武装勢力による欧米人の誘拐及びニジェールを含むECOWAS加盟国内におけるテロ活動の活発化が懸念される。
さらに、ニジェール南部では、ナイジェリアにおいて北部を拠点として活動するイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」が越境してテロ等を実行する可能性もある。
■リビア
1990年代にアルジェリアでテロ行為を繰り返した組織が拡散・流入。
 ・2013年1月28日、英国外務省は、トリポリの英国大使館に対する潜在的な脅威があるとして、英国人に対して引き続き必要なものを除くすべてのトリポリ渡航を避けるよう勧告した。
 ・リビアでは、2012年9月にベンガジの米国領事館が武装集団に襲撃され、在リビア米大使を含む4人が死亡するなど、テロと見られる治安事案が発生している。
 ・また、アフリカ北西部では、マリ情勢の悪化に伴い仏政府が軍を派遣し、マリのイスラム武装勢力が欧米諸国に対するテロ攻撃を行う旨警告しており、周辺国でテロの脅威が高まっています。2013年1月16日には、アルジェリア東部の石油プラントで日本人を含む多数の外国人がイスラム武装勢力に襲撃・拘束され、多くの犠牲者が発生した。
商機を求めて世界中の企業が危険をものともせずに危険地帯へ進出している。企業戦士の戦死はこれからも増えるに違いない。(頂門の一針)
杜父魚文庫

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