11639 新たな中東戦争の可能性  古澤襄

米ウォール・ストリート・ジャーナルは社説で「新たな中東戦争か―イスラエルがシリア空爆」と注目すべき論調を掲げた。
イスラエル空軍が1月30日未明にシリアとレバノンの国境地帯でトラックの車列を攻撃した。同時にイスラエル軍は、ミサイル迎撃システム「アイアンドーム」の一部を初めて北部に配備した。これは北部国境付近での戦闘の可能性が高まっているからに他ならないとしている。
ウォール・ストリート・ジャーナルはコンゴと違い、シリアの内戦には米国の重要な国益が絡んでいると指摘した。
1つ目は、アラブ諸国における主要な顧客を取り除くことでイランに戦略的な打撃を与えるということ。
2つ目はイランから数百人の米国人を殺害しているテロ組織、ヒズボラへの軍事供給リンクを断ち切るということ。
3つ目はシリアの社会的混乱が近隣諸国に波及するのを防ぐということ。
4つ目はより広い範囲の地域戦争の勃発を回避するということ。
5つ目はアサド政権崩壊後のシリアで確実に影響力を行使する立場を築けるようにするということ。
そして6つ目は、さらに多くの人々が殺されるのを防ぐということ。
さらにアサド政権を崩壊に追い込む手助けとして、米国がシリアで地上戦を展開する必要はない。アレッポとその他の西部の都市を飛行禁止区域に設定するなどすればいい。
2011年にリビアで同じような飛行禁止区域が設けられとき、カダフィ大佐の破滅は決定付けられた・・・としている。シリアに対する米国の二年に及ぶ不介入が、変わる可能性を示唆したものともとれるウォール・ストリート・ジャーナルの指摘は注目しておく必要がありそうだ。
<シリアとレバノンの国境地帯で1月30日未明、イスラエル軍機がトラックの車列を攻撃した。イスラエル政府は、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラへの主要な武器流出を防ぐためなら軍事行動も辞さないとシリア政府に再三にわたって警告してきた。今回の空爆は、シリア側がそうしたメッセージを無視し続けたために起きたようだ。
トラックが実際に輸送していたものについては憶測の域を出ない。その前の週、イスラエルのネタニヤフ首相は、シリアが備蓄する化学兵器―推定1000トン―がヒズボラの手に落ちる可能性について警鐘を鳴らしていた。
30日の報道によれば、その車列は高度2万4000メートルを飛行する物体も撃墜可能なロシア製対空ミサイル「SA17」を輸送していたという。仮にそうだとすると、またしてもイスラエルと戦争になった場合、その武器はヒズボラにかなりの戦術的優位性を与えていただろう。
この武器の輸送を許可したとすると、シリアのアサド大統領は何を考えていたのだろうか。われわれには知る由もないが、3月で3年目に突入する内戦の結果、シリアは徐々にイランの革命防衛隊とイスラエル軍という隣国からの危険な侵入者たちの軍事活動の場になりつつある。
アサド大統領はイスラエルとの戦争を望んでいないかもしれないが、イラン政府は別の筋書きを描いている可能性がある。イランは、シリアへのいかなる攻撃も自国への攻撃と見なすと警告した。イスラエル軍がシリアの首都ダマスカス近くの科学研究施設を攻撃したとするシリア国営テレビの主張は、イランにとってイスラエルとの緊張関係をエスカレートさせる口実になるかもしれない。
これに対しイスラエル政府は万全を期している。ネタニヤフ首相はおそらくSA17の末路について説明するために国家安全保障担当補佐官をモスクワへ派遣した。ロシア政府はアサド政権を支持しているからだ。イスラエル軍はまた、ミサイル迎撃システム「アイアンドーム」の一部を初めて北部に配備した。これは北部国境付近での戦闘の可能性が高まっているからに他ならない。

中東や北アフリカでの「戦争の流れは後退しつつある」(2012年の一般教書演説)という対場の米国の対応はどうだろうか。昨年、オバマ大統領は化学兵器の移動に関してシリアに警告を発したが、それ以降はほとんど何もしていない。オバマ大統領は1月、多額の選挙運動資金を寄付した人物――米政治誌「ニュー・リパブリック」の新発行人――とのインタビューでシリアへの介入における米国の限界と米国が介入することで事態が悪化するリスクを強調した。
「シリアで殺害された数万人と現在コンゴで殺されている数万人とを、どのように天秤にかけたらいいのか」オバマ大統領は、過去に米国が行ってきたすべての介入を妨げたであろう疑問を口にし、考え込んだ。
大統領に代わってその疑問に答えるとしよう。コンゴと違い、シリアの内戦には米国の重要な国益が絡んでいる。1つ目は、アラブ諸国における主要な顧客を取り除くことでイランに戦略的な打撃を与えるということ。2つ目はイランから数百人の米国人を殺害しているテロ組織、ヒズボラへの軍事供給リンクを断ち切るということ。3つ目はシリアの社会的混乱が近隣諸国に波及するのを防ぐということ。4つ目はより広い範囲の地域戦争の勃発を回避するということ。5つ目はアサド政権崩壊後のシリアで確実に影響力を行使する立場を築けるようにするということ。
そして6つ目は、さらに多くの人々が殺されるのを防ぐということ。これは米国の国益というよりもわれわれの価値観の問題で、最近の流行ではないということもわかっているが。

シリアに対する米国の2年に及ぶ不介入は、オバマ政権が恐れていた悪夢のようなシナリオの実現を近づけてしまった。アサド政権を崩壊に追い込む手助けとして、米国がシリアで地上戦を展開する必要はない。アレッポとその他の西部の都市を飛行禁止区域に設定するなどすればいい。2011年にリビアで同じような飛行禁止区域が設けられとき、カダフィ大佐の破滅は決定付けられた。
オバマ大統領は先日の就任演説で終わりなき戦争の時代の終焉を宣言した。オバマ大統領がそれを本気で信じているとすれば、これからも多くの戦争が起こるだろう。(ウォール・ストリート・ジャーナル)>
<【ワシントンAFP=時事】イスラエルが1月30日にシリアの首都ダマスカス近郊を空爆した際、主要な生物・化学兵器の研究施設が損害を受けた可能性があることが分かった。米紙ニューヨーク・タイムズが3日報じた。
同紙が米軍高官の話として伝えたところでは、イスラエル軍機による空爆はシリアからレバノンに地対空ミサイルを輸送していた車列を狙ったものだったが、「(空爆を受けた)ミサイルの二次的な爆発」で近くの研究施設に被害が出た可能性が高いという。
ダマスカス北方にある研究施設は生物・化学兵器開発との関連が疑われ、10年以上にわたり欧米による制裁の対象となっている。(時事)>
杜父魚文庫

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