<ロシア南部チェリャビンスク州周辺で15日に落下した隕石(いんせき)の上空爆発から一夜明けた16日、「この世の終わり」を思わせる爆発当時の異様な光景が、現地からの証言で明らかになってきた。また米航空宇宙局(NASA)は、隕石の大気圏突入前の重さはロシア宇宙庁が当初、推定した10トンの約1000倍にあたる約1万トンとの推計を発表した。
床に落ちたいくつものノートパソコン。頭から血を流した人が出口に殺到する。「爆弾テロか」「この世の終わりがついに来た」。恐怖を目の当たりにした現地の人々が、隕石飛来時の様子を生々しく証言した。
チェリャビンスク国立大学で日本語を教える阿曽加苗さん(28)=兵庫県宍粟市出身=は、徒歩通勤中、飛来に遭遇。最初に感じたのは光ではなく熱だった。「暖かく感じた方を見たら、光が走っていた」。日の出の太陽が凄い勢いで走るような、異常な空だったという。
隕石は、光だけではなく、強烈な熱線を発していた。「寒い部屋でストーブをつけたよう。急に熱を感じた」。その後、間をおいて起きたバンバンという爆発音に「誰かが爆弾を仕掛けたのだと思った」と話す。同大学では時々爆弾テロの避難訓練をしており、本番が来たと感じたという。
大学に着くと、一部の窓ガラスが割れていた。マヤ文明の暦代わりが終末論と絡めて騒がれたこともあり、ある女子学生は「この世の終わりが来たのかも」と漏らした。
窓を突き破った爆風はガラス片をまき散らしながら、教室を猛烈な勢いで通り過ぎていった。チェリャビンスク繊維軽工業専門学校で授業を受けていたジアナ・ユスフォワさん(15)ら女子生徒17人が机の上に載せていたノートパソコンは全て床に叩きつけられた。
「誰も何が起きたか分からなかった」とユスフォワさん。一緒に教室にいたグリシエ・ダウトワさん(16)は「核戦争の始まりかと思った。原爆は最初、強い光を発したと習ったから」と、広島や長崎の原爆を連想し恐怖に震えた。
チェリャビンスク州のまとめによると、割れた窓ガラスの破片などによる負傷者は16日までに約1200人となった。被害を受けた建物は州都チェリャビンスク市だけで3300棟を超え、被害総額は10億ルーブル(約31億円)を上回る見通しとなっている。
州警察当局者はタス通信に対し、州内の被害地域は10地区に上ったと説明。被害は州都チェリャビンスクを中心に半径約100キロに及ぶ広い範囲にわたったことになる。(スポーツ・ニッポン)>
杜父魚文庫
11772 「この世の終わり」ロシア隕石 邦人恐怖の証言 古澤襄

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