現代中国の本質とは「八大紅色貴族」が冨を寡占し、金融を支配している。蒋介石の中華民国初期も四大財閥が国家経済そのものを握ったように・・・。
中華民国初期、蒋介石が率いた四大財閥とは蒋介石、宋子文、孔祥煕、陳果夫である。台湾へ移ってからの蒋介石は一族が皇帝のごとく、冨は蒋介石、宋美齢のもとに集中し、抗日戦争を闘った軍人等が周りを囲んで、冨のおこぼれを得た。
日本時代の社会インフラ、工場、企業、建物を残らず押収し、世界一金満政党=国民党の支配は鉄壁となった。
トウ小平以後の中国。改革開放でめざましい経済発展をしてきた。「冨の公平な分配」はすこしもなく、社会正義は忘れ去られ、究極的には社会主義からもっとも遠い、冨の独占体制ができあがった。
いまの中国には「八大紅色貴族」が冨を独占し、繁栄を享受し、子供達は殆どが外国に暮らしている。現代中国の冨を支配する八大家族、すなわち「八大紅色貴族」とは?
1979年に米国と国交回復がなされると、真っ先に米国へ渡航が許可されたのは革命元勲、共産党高官の子等をさす「太子党」の面々で、ハーバード、スタンフォード大学などへ留学した。
彼らは学問にあまり興味を示さず、米国やカナダに不動産をもとめ、ビジネスに没頭し、とくに米中貿易の利権を分け合った。前年1978年の中国のひとりあたりのGDPは165ドルだった。当時の米国のひとりあたりのGDPは22462ドルだった。
▼八大紅色貴族とは誰々か。
「匪賊が権力を握ると貴族になる」(拙著『現代中国 国盗り物語』(小学館新書)。「八大元老」とはトウ小平、王震、陳雲、李先念、膨真、宋任窮、楊尚昆、そして薄一波である。
トウの長男、トウ僕方は貿易商社の特典が与えられ、この企業を通さないと多くの輸出入業務が出来なかった。王震の息子、王軍は中信集団社長のポストが与えられ、金融保険不動産などに進出し、栄毅仁らと組んで国際ビジネスを飛躍させた。当時の中国の外貨準備高は8億ドル強しかなかったが、いまや3兆3000億ドルとなった。
あれほど改革を痛罵した陳雲の娘は米国との商いに忙しく、失脚した膨真の息子は、それなりの利権を拡大し、楊尚昆の娘もまた。つまり「太子党」の主力は政治に興味をしまさず、多くが商売に走った。
八大元老のうちの6人の子供らはビジネス活動に埋没し、企業経営、不動産投資に才能を見いだした。薄煕来一族がでたらめな蓄財を展開してきた経過や温家宝一家の不正蓄財は欧米のマスコミが詳細に暴露した。薄は失脚したが、息子達は無事である。
この独裁的特権をもつ「貴族」に群がった新興財閥は数十の愛人を囲い、外国に十数軒の別荘、そして自家用飛行機。ボスが失脚すると、かれらの企業は連鎖倒産。まさに杜子春のごとし。
その後、表面的に権力の変遷があって江沢民、曾慶紅、胡錦濤、温家宝、そして習近平の一族は、その家族、子供、親族らが一丸となって蓄財に励み、冨を寡占し、世界的財閥の座を獲得した。
『東方時報』(2月21日付け)に拠れば、これら最高権力から付随的に派生する利権により、いまの中国は「44大家族」に冨が集中しているという。
「冨の公平な分配」を謳いながら、冨を独占してやまないのが、この太子党による中国経済の構造的ゆがみを造成し、その基本構造がもつ硬直的偏在性は、つぎの改革、規制緩和、競争力躍進などを不可能としている。嗚呼、まさに現代中国はいまも、『水滸伝』、『金瓶梅』の世界!
杜父魚文庫
11813 「八大紅色貴族」が冨を独占する中国 宮崎正弘

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