昨年末を、ワシントンで過した。
ホテルの部屋のテレビで固唾を呑んで、NHKの総選挙の開票速報を、リアルタイムで見た。自民党が圧勝して、脱原発を掲げた諸党が完敗したのに、喜んだ。
私は朝日新聞をはじめとするマスコミが、「卒脱原発」を直前まで煽りたてたので心配したが、安堵した。
原発を停めるのは、狂気だとしかいえない。いま、中東が激動している。いつ、湾岸の産油国が混乱して、日本への石油の供給が絶たれるか、分からない。
アメリカでは、アメリカ経済の将来について、かつてなく楽観していた。
アメリカは国際エネルギー機関(IEA)によれば、2019年までにシェール・オイル・ガス革命によって、サウジアラビアを追い抜いて世界最大の産油国となり、2035年までにエネルギーの自給自足(エネジー・インディペンデンス)を達成しようと、発表している。
すると、これまで中東などから石油を買うために、国外に巨額のドルを垂れ流していたのが是正されて、外国に出た製造業が国内に戻ってくる(ホーム・カミング)ことが、期待されている。
日本は国の存亡を、アメリカをひたすら頼りにして縋っているから、朗報である。
ワシントンの連邦議会議事堂のわきに、アメリカの政治関係者なら誰でも知っている、『モノクル』(片眼鏡)という一軒屋のレストラン・バーがある。1階のバーが、いつも上下院議員のスタッフや、政権の中堅幹部で賑わっている。
私はワシントンを訪れるたびに、この店を覗くようにしている。私も常連だから、店主や、バーテンが歓迎してくれる。今回も、旧知の議会スタッフたちと落ち合って、浅酌した。
みな、私が保守派だと知っていたから、安倍自民党が勝ったことを、祝ってくれた。
私はオバマ政権が、日本へのシェール・ガスの輸出を認めるように、希望した。といっても、日本へ輸出するためには、港湾施設などのインフラが整備されていないから、日本として投資するべきだと、意見を述べた。
しばらく後に、チャック・ヘーゲル前上院議員の元スタッフが、私たちに合流した。
ヘーゲル前議員はアメリカのマスコミによって、パネッタ国防長官の後任として指名される最有力候補だといって、取り上げられていた。
共和党のヘーゲル前議員は国防通で、ネブラスカ州から選出されていたが、オバマ大統領とも親しく、超党派の起用という計算も働こうと、取り沙汰されていた。
ヘーゲル前議員の元スタッフが加わったことから、前議員が話題となった。「誰が次期国防長官になろうとも、もっとも重要な仕事が、国防費をどう削減するかということになるね」と、1人がいうと、全員が頷いた。
そして、アメリカがエネルギー供給について、中東から乳離れすることになるという話に、戻った。
すると、また1人が、私に「アメリカが中東の石油を必要としなくなったら、ペルシア湾の自由航行を護るために、第5艦隊を貼り付けているが、撤収することとなるね。年間80億ドル(約6000億円)も、かかっている。第5艦隊がいなくなったら、日本があとを引き受けるかね?」と、たずねた。
杜父魚文庫
11819 米国シェールガス革命は日本の安全保障に直結する 加瀬英明

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