11839 うごめく離合集散 夏の参院選まで5カ月  古澤襄

<今年最大の政治決戦といえる夏の参院選まで5カ月。選挙を前にした風物詩的な「離合集散」がうごめき始めた。
「次期日銀総裁の国会同意人事などで、党議拘束にかかわらず自由な立場で判断したい」
民主党の川崎稔氏(佐賀)が離党届提出後の22日の記者会見でこう説明すれば、植松恵美子氏(香川)も同日夜、地元の高松市内で会見し、党の消費税増税などへの対応を挙げ「党人としては失格で申し訳ないが、政治信念に勝るものはない。自分の考え方とそごがあり、信念を貫きたい」と強調した。
植松氏は「選挙のためではない」と離党に理解を求めたが、これまで支援を受けてきた連合などに対して「一緒に戦えれば幸せだ」と言い放つ厚顔ぶりにはあきれるばかりだ。「先の衆院選に大敗し、再生のめどもつかない民主党では戦えない」と素直に言い切ってもらった方が潔さが伝わるのだが…。
そもそも川崎、植松両氏とも初当選を果たした19年の参院選では民主党の政策に共感、理解し、民主党の看板で戦ったはず。先の衆院選で民主党議員が泥舟から大量に出て行く「離党劇」をみせつけられただけに、参院民主からの離党も驚きはしないものの、「自分の考えとは違う」と平気で言い放つ姿には、「政治への信頼性がないことを自ら証明しているようなものだ」(政界関係者)。
政治の離合集散は当たり前、国民のためになればいいとの指摘もある。しかし、離党後、無所属議員として国民のために何ができるのか。別の政党に移っても党の方針と自分の考えが違った場合、また離党するのか。結果的に政治家として「根無し草」になりかねない。
一方、仰天したのは国民新党の自民党への吸収合併騒動。所属議員3人の国民新党は22日に議員総会で合併の際には3人がそろって自民党入りする方針を決めた。「行き過ぎた郵政民営化の見直しという目的を達した。ぶれない保守として自民に帰る」(自見庄三郎・国民新党代表)というのが理由だ。
自見氏は、小泉政権の郵政民営化に反対し、17年に自民党を離党。20年の参院選で国民新党から当選した。その後、民主党政権と連立を組み、金融・郵政改革相を務めたが、支持基盤の全国郵便局長会から夏の参院選での支援を断られている-。だから古巣・自民党に戻りたいというわけだ。
自見氏は吸収合併に「自民党は受け入れていただける」と楽観視している。背後に引退した自民党の大物政治家の影がちらつくが、そう簡単に進むような気配ではない。最大のネックは23年に自民党から除名処分を受けた浜田和幸参院議員の存在だろう。

浜田氏といえば、23年6月に当時の菅直人首相から東日本大震災の復興担当の総務大臣政務官への就任要請、いわば「一本釣り」の打診を受け、自民党を離党した過去がある。その際、自民党は民主党政権による引き抜きに猛反発し、浜田氏を除名処分にした。
そんな苦い過去を想起させるだけに、当然、自民党は吸収合併に否定的だ。
浜田氏の離党の際、議員辞職を求めた石破茂幹事長は「解党が先だ」と強調。昨年の衆院選を念頭に「わが党と正面から戦ったことに得心がいく説明を受けていない」とも。
衆参両院の議席が異なる「ねじれ国会」だが、「冷飯暮らしの野党は嫌だ」という我欲がミエミエ。あまりにも虫が良すぎる国民新党の発想に、言葉を失う。
(産経 岡田浩明の永田町便り)>
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