11845 日銀次期総裁と目される黒田氏の横顔   古澤襄

<安倍晋三首相は、日本銀行次期総裁に元財務官の黒田東彦アジア開発銀行総裁を指名する見通しだ。
現在68歳の黒田氏は多くの点で日本の権力機構を支える柱の1つである。黒田氏は1967年に東京大学法学部を卒業し、大蔵省に入省した。財務官のポストにまで上り詰め、国際金融会議で日本の意見を主張する役割を務めた。
しかし、黒田氏は日本の官僚機構の中で非主流派と呼ばれている。国際金融畑出身で、予算や組織管理をめぐる争いにどっぷり浸かったわけではなかったからだ。
同じく日銀総裁候補として名前が挙がっている武藤敏郎氏は国内畑で、黒田氏にはない国内人脈を育て、黒田氏より上の財務事務次官のポストに就任した。
これに加えて長く日銀を批判してきたことから、落としどころとして有力な候補とされている。黒田氏は政府内の経験が豊富で信頼できるが、改革を避けるほど主流派というわけでもない、というわけだ。
安倍首相の複数のアドバイザーによると、黒田氏の弱点は黒田氏がアジア開発銀行総裁という現在のポストになくてはならない人物と見られる点だ。黒田氏は2005年のこのポストに就任した。現在の任期(5年)が始まってからまだ2年も経っていない。
日本の政府関係者からは、黒田氏が日銀総裁を引き受けた場合、1966年の創設当初から日本人が占めてきたアジア開発銀行の総裁ポストを失うかもしれないと懸念する声が上がっている。
日本の財務省官僚にとってアジア開発銀行は米国にとっての世界銀行、欧州にとっての国際通貨基金(IMF)と同じで、世界的な影響力の基盤であるこの国際金融機関を運営するのは彼らであるべきと考えている。
アジアで日本の立場が低下していることに懸念が高まっている今、日本にとってアジア開発銀行を失うことは大きな打撃となろう。
(ウォール・ストリート・ジャーナル)>
杜父魚文庫

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