<【ワシントン=古森義久】オバマ米政権がアジア最重視の安保政策を打ち出してから、ここ一年の総括が政権の代表から2月27日、発表された。中国の封じ込めではないとされながらも、中国の軍拡を懸念する諸国への米国からの一連の新たな安保協力の拡大を成果としている。
オバマ政権のマーク・リパート国防次官補(アジア太平洋安全保障担当)は、ワシントン市内での「アジアへの再均衡の一年の評価」と題するシンポジウムで演説し、パネッタ前国防長官が昨年に発表したアジア最重視の新戦略の総括を明らかにした。
同政策は「アジアへの旋回(ピボット)」とか「アジア再均衡(リバランス)と呼ばれるが、オバマ政権では最近はより穏健に響く「再均衡」という表現に統一するようになった。
同次官補は再均衡政策が中国の封じ込めを意図する戦略ではないと強調する一方、同政策の第1の柱の「パートナーシップ」ではこの一年、タイとの同盟関係で軍事準備や兵器互換性を向上させ、インドとの防衛協力の強化、ニュージーランドの海軍艦艇の米国寄港の増加、ミャンマーとの軍対軍の接触開始、マレーシアへの米空母の初訪問などを果たした、と述べた。さらにオバマ政権がインドネシアとのテロ対策で協力を拡大したとも強調した。
次官補は「前方駐留」については日、韓、豪というアジア・太平洋での伝統的な主要同盟諸国との防衛の絆(きずな)をさらに強化したと言明し、日本については「(沖縄の)海兵隊基地の移転では着実な前進を果たした」と述べたが、その根拠は特に示さなかった。
同次官補はフィリピンやシンガポールが南シナ海での海洋紛争に備えて創設した東南アジア諸国合同の初の「沿海戦闘艦艇」への米国の支援をも強調した。
「パワー・プロジェクション(兵力遠隔地投入)」については、米海軍艦艇全体の60%以上が2020年までにアジア・太平洋を母港とする方針を指摘し、米軍の攻撃型潜水艦、第5世代戦闘機、新型巡航ミサイルなどのアジアへの新投入をも言明した。
さらに、アジア再均衡策の第4の柱として「原則」をあげ、公海での自由な航行や法の支配を指摘して、中国の国際規範違反の言動への遠まわしな批判を述べた。しかし、同次官補はオバマ政権が直面する財政危機からの国防費の強制削減が、このアジア最重視政策を大幅に阻害する危険性があることをも認めた。
杜父魚文庫
11882 中国懸念でアジアでの安保協力拡大 米国防次官補 古森義久

コメント