毎日新聞は一日の朝刊で、安倍首相が日銀次期総裁に黒田東彦(くろだ・はるひこ)アジア開発銀行総裁を起用した理由を「黒田氏は筋を曲げない頑固者。首相は日銀理論に染まらない人を求めた」と内幕を書いている。
25日には首相はみんなの党の渡辺喜美(よしみ)代表の携帯に電話して、「財務省推薦ではない」と協力を要請している。
<政府は28日、アベノミクスの柱「次元の違う金融政策」を担う日銀次期正副総裁人事案を衆参両院の議院運営委員会理事会に提示した。総裁に元財務官の黒田東彦(はるひこ)アジア開発銀行総裁(68)、副総裁に岩田規久男学習院大教授(70)と中曽(なかそ)宏日銀理事(59)を起用。
衆院議院運営委員会は3月4日に黒田氏から、5日に両副総裁候補から所信聴取する。政府・与党は14日の衆院本会議、15日の参院本会議での採決を目指す。野党多数の参院での同意が焦点だが、第1党の民主党は2月28日の財務金融部門会議で前原誠司氏ら役員に対応を一任。党内で黒田総裁容認論が広がっており、同意の公算が大きい。
「黒田さんでいく。協力してほしい」。25日夜、安倍晋三首相はみんなの党の渡辺喜美(よしみ)代表の携帯に電話、黒田総裁案に理解を求めた。第1次安倍政権の閣僚の渡辺氏は公務員制度改革など対霞が関で共闘した盟友。首相は「財務省推薦ではない」と強調した。
実際、財務省は武藤敏郎元次官を総裁候補に推していた。黒田氏の1年先輩で主流の主計畑出身。調整力にたけ「バランスの武藤」の異名を持つ。
同省が昨年末の安倍政権発足直後から首相の意向を探った結果、内閣府出身で元副総裁の岩田一政氏と黒田氏の積極緩和派2人が浮上。5年前に野党の反対で武藤総裁案をつぶされたリベンジの思いもある財務省は、武藤氏の組織運営能力や財政に精通した点を強調、麻生太郎副総理兼財務相を通じ首相に進言した。
しかし、与党は参院で過半数に16議席足りず、同意には野党の協力が必要。武藤案にはみんなの党が反対、5年前に不同意にした民主党にも難色を示す声があった。
1月下旬には、複数の政策ブレーンが日銀のレジームチェンジ(体制変革)を念頭に武藤案に反対意見を具申した。一方、外債購入が持論の岩田一政総裁案は海外から「円安誘導」批判を招く恐れがあった。
財務省出身の黒田案なら麻生財務相の顔も何とか立つ。アジア開銀総裁職を中国などに奪われる懸念も極秘調査で後退。小泉政権の官房副長官と内閣官房参与として机を並べた間柄でもある黒田総裁案を固めた首相は訪米から帰国後、副総裁候補2人も固め、根回しを急いだ。政策ブレーンの一人は「黒田氏と岩田規久男氏は筋を曲げない頑固者。首相は日銀理論に染まらない人を求めた」と解説する。(毎日)>
杜父魚文庫
11888 日銀総裁に黒田氏 「頑固者」選んだ首相 古澤襄

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