11912 書評・東日本大震災で奮闘した石巻署員220名  宮崎正弘

東日本大震災の救援を描いたドキュメントは多いが、石巻警察署に的を絞った、警察官の地道な救援を記録した珍しいドキュメント。
<<山野肆朗『警察官の本分 いま明かす石巻署員がみた東日本大震災』(総和社)>>
あれから二年の歳月が流れている。まだ衝撃の記憶がなまなましく残り、泪が止まらない。東日本大震災。
テレビから流れ出した映像は激甚なショックを多くの国民に与えたが、他方で外国メディアが関心を寄せたのは、なぜ日本では暴動、略奪がおきなかったのか。
ロス暴動では韓国人スーパーが略奪の対象となり、屋上から韓国人店員がピストルで暴徒めがけて発砲していた。唐山地震では被災地の犠牲者から財布、腕時計をぬすみあるく集団があった。
ところが石巻署には財布を拾った、流れ着いた金庫を拾った等と届け出が絶えず、諸外国では信じられないことが陸続とおきた。
犯罪が激減し、なぜ人々は助け合えたか。自衛隊の活躍、アメリカ軍のトモダチ作戦などは書籍にもなり、ドキュメント番組が造られてきた。
ところが、警察官の獅子奮迅の活躍をえがいたドキュメントは、これまでのところ記憶にない(評者はテレビを見ないのでテレビドキュメント番組は知らないが)。
本書は石巻署員が、あれからいかなる活動をしたのかをドキュメント風に綴った感動的な作品となった。涙なくしては読み通せない。
津波の発生から、風呂に入れず下着も替えず、人命救助、遺体の運搬、身元確認作業、ようやくにしての応援部隊の来援があったものの不眠不休の活動が繰り広げられ、石巻署員220名は職務を全うした。感動の書物である。

杜父魚文庫

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