11937 書評「日本を守るには何が必要か」   宮崎正弘

中華帝国が四つに分裂するときは共産党が瓦解し、大混乱にロシアが火事場泥棒的に参入すると、どうなるか?
<<佐藤守『日本を守るには何が必要か』(青林堂)>>
ジェット戦闘機パイロットとして、霊的な体験を何回もされた著者は元空将、元南西航空混成団司令。軍人OBで、これほど筆が立つ人もめずらしい。
前作『大東亜戦争は昭和五十年四月三十日に終結した』をつい先日、書評させてもらったと思いきや、もう新作である。筆のスピードも速い。
我が国の防衛の在り方をめぐり、とりわけ沖縄基地問題、対中国軍事脅威への対応など、論議するべきポイントが要領よくまとめられているが、これらを米国の軍人高官ならびにシンクタンクの軍事専門家や、上海のシンクタンクと討議してきた体験から、相手は日本の防衛力、その対応の頼りなさを如何に総括しているか、会話の端々から心情やホンネやはったりを巧妙に嗅ぎ出すところに興味を引かれて読んだ。
最終章では、中国が四つに分裂するシナリオが語られ、チベット、東トルキスタン、モンゴルと中華帝国の四つになると予測されるのだが、この伝でいくと旧満州国も分裂になって五つのシナリオにもなるのではないだろうか。
それはともかくとして、中国共産党の瓦解劇がおきた場合に膨大なボートピーポルが日本に押し寄せる恐怖、もうひとつ、その混乱に乗じてロシアが取るであろう火事場泥棒的行為の近未来予測にも迫力が満ちている。
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました