11943 日本は尖閣問題でも中国の調教にだまされた   古森義久

中国の日本に対する調教戦略の紹介です。
<<中国は日本を調教する 老獪に使い分けられるアメとムチ>>
アンドリュー・スコベル氏は中国の軍事や安全保障の動向についての研究で広く知られる米国人学者である。米国陸軍大学の戦略研究所で研究員や教授として長年、中国の軍事を研究し、現在はランド研究所の上級研究員を務める。著書では『中国の軍事力使用』という書が高く評価された。
■国交樹立前から使い分けていたアメとムチ
さて、この2人の気鋭の研究者が共同で執筆した書『中国の安全保障追求』は中国の北東アジアでの対外政策、対外戦略について述べ、その中で「中国は日本を調教する」という章を設け、中国の対日政策を詳述した。
同書は日中両国の関係を国交樹立前の1960年代にまでさかのぼり、具体的な事例を多数挙げて、中国の日本に対する戦略を以下のように特徴づけていた。
・中国共産党政権は一貫して中国の政策や立場に同調する日本側の政財界の勢力や人物には経済的利権や政治的特権を与えて報奨としてきた。その一方、中国が非友好的と見なす日本の企業などには貿易や投資での妨害、政治家には冷遇や非難の措置で懲罰を加えてきた。
・中国当局は日本の政策が好ましくない方向に動くと、海軍、空軍を動員しての示威行動のほか、自国民一般の反日感情を利用した反日デモや暴動を展開させる。中国では全般的に日本への敵対的な民族主義的感情が強いとはいえ、当局がその種の感情の噴出のタイミング、長さ、強さを調整する。
・中国当局は日本側から政治や経済での譲歩、修正を奪うために、日本側の戦時中の「残虐行為」を持ち出し、日本側の罪の意識をあおり、中国側の道義的優位を主張する。日中間の歴史や記憶を巡る紛争は中国側の政策の動因ではなく、警告の道具なのだ。
同書は、中国のこの対日調教戦略の多数の実例を、日中国交樹立前の時代から示す。また1990年代には、日本政府が天安門事件での国際的な対中制裁を破る形で対中宥和策を取ったことへの報奨として、日本側の尖閣諸島での灯台建設にもさほど抗議はしなかったのだとも記していた。
鄧小平氏が、尖閣問題を棚に上げ、次世代の処理に任せるという趣旨の発言をしたことも同様だったという。現実には中国は尖閣問題は棚上げどころか、92年には「領海法」という国内法を勝手に制定し、事実上の尖閣諸島の中国領宣言をしていたのだ。だが表面では日本の立場を非難するような言動はツユほども見せず、「アメ」対応の体裁に徹したのだった。
同書はまた中国当局が日本の政界でも中国側の政策に同調する個々の政治家には特に丁重で友好的な対応を見せる実例をも挙げていた。財界に関しても同様なのだという。(つづく)
杜父魚文庫

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