11964 中国が優遇する日本の親中派  古森義久

中国の対日戦略の分析です。この項で終わりです。
<中国は日本を調教する 老獪に使い分けられるアメとムチ>
要するに、中国は日本側の親中派を常に優遇し、反中派や中間派には冷たく当たり、ときには非難の声明をぶつけたり、中国への入国を拒否したり、という「ムチ」の作戦で切り崩しを図るということである。
■小泉政権の時代にも親中派には「友好」の働きかけ
同書は2001年からの小泉純一郎政権の状況について特に以下のように述べていた。
・小泉首相は米国との防衛協力を、ミサイル防衛や自衛隊のイラク派遣、防衛庁の省への昇格の試みなどにより大幅に強めた。小泉氏はそして靖国神社へ の定期的な参拝を実行した。
中国が反対するこのような一連の言動に対し、中国共産党は中央宣伝部を主体として総力を挙げる糾弾作戦を展開した。2005年には小泉政権による日本の国連安保理の常任理事国入りへの外交活動が広がり、それに猛反対する中国当局は国内で大規模な「反日デモ」を組織した。その間、 日本の親中派への「友好」の働きかけも忘れなかった。
確かに中国は小泉政権の時代にも村山富市元首相らを中国に招き、種々の公開の場で日中関係を語らせるというような戦術を怠らなかった。村山氏が中国各地の公式行事に出て、「村山談話」の効用を説き、いまの日本の政府の対中政策を批判するというパターンの政治宣伝は頻繁だった。
同様に、小泉政権時代は首脳会談を拒み続ける一方、自民党を含めての広範な政治家層に日中友好議員連盟などを通じて「友好」の手を差し伸べる努力も絶やさなかった。要するに、中国側が喜ぶ言動を取る日本側の政界、財界の人物は、ことさらに中国側から優遇されたのである。
この『中国の安全保障追求』という書は、中国当局のこの種の対日戦略について警告をも発していた。それは中国共産党政権が中国国民の反日感情を「日本叩き」に利用する際、その感情が中国政権への非難へと拡大する大きな危険があるという点だった。
これまでの反日デモや反日暴動を見ても、確かに、当初は明らかに当局の扇動や指導や黙認によって反日の炎が燃え上がるが、その勢いが一定線を超えると、中国当局は明らかにその抑制や火消しへと動くというパターンが明白である。
日本にとっても、中国にどう対応するかは、これからも長年にわたる国家的な超重要課題である。中国共産党政権が日本側をこのようにアメとムチで切り崩し、日本の世論や政策を中国にとって有利な方向へと変えようとする戦略は十二分に意識しておくべきだろう。(終わり)
杜父魚文庫

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