12031 森喜朗元首相が択捉島を除く三島返還論   古澤襄

ロシア・メデイアに日露関係を前向きに論じる記事が出るようになった。代表的なものとして国営通信社・タス通信の論評とロシア新聞の「変貌する日露関係を実感」を取り上げてみる。
<毎日新聞の全国世論調査によると、北方領土問題につき、回答者の三分の二以上にあたる67%が、政府の主張する4島返還にこだわらずに「柔軟な対応をすべきだ」と答えた。一方、4島返還を支持したのは29%にとどまった。アンケートは電話で、3月16~17日に行われた。
こうした予想外の結果は、日本の世論に本質的な変化が起きていることをうかがわせるが、変化は政界にも見られる。
安倍晋三首相の特使として2月にモスクワでプーチン大統領と会談した森喜朗元首相は、ロシア訪問に先立ってテレビインタビューで、4島を露日で分割する案を、あくまでも個人的な意見と断りながら、示している。
それによると、最も経済的に発展し人口稠密で、面積でも最大(4島全体の63%を占める)である択捉島をロシア側に残し、残り3島を日本に返還するという。
このインタビュー後、日本政府は、「北方四島帰属の問題を解決して」平和条約を締結するという政府の立場は不変であるとの声明を発表している。また日本政府は、ロシア政府が4島に対する日本の主権を承認すれば、その返還の時期と条件については柔軟に対応する用意があるとしている。
(タス通信)>
<「変貌する日露関係を実感」 ロシア新聞
―2012年に露日関係で進展をみたことで、とくに重要だったのは何ですか? 今年2013年の展望は? 最も良い傾向が現れているのはどの分野でしょう? 今後の両国間の関係強化には何が必要でしょうか?
昨年は、9月のウラジオストクAPEC(アジア太平洋経済協力)サミットの成功裏の開催に象徴されるように、ロシアが目指す、アジア太平洋地域との経済関係強化において、重要な契機となったと思います。日本は、ロシアが、同地域との経済関係強化の関連で、極東地域の発展に本腰を入れ始めていることを歓迎しています。
こうした状況の中で、昨年11月に東京で開催された貿易経済に関する日露政府間委員会第10回会合において、極東・シベリア地域における協力をはじめ、エネルギー・省エネ、医療、現代化・イノベーション、運輸、農業などの各分野における協力と、貿易投資環境の整備の必要性に関して、建設的かつ具体的な議論が行われたことは、今後両国の協力関係を更に強化していく上で極めて有意義だったと思います。

■インタビュー:森喜朗元首相 「日露は科学技術分野で協力関係築ける」
今後の日露関係について言えば、昨年12月に行われた安倍総理とプーチン大統領の電話会談において、安倍総理より、アジア太平洋地域の戦略的環境が大きく変化する中で、この地域のパートナーとしてふさわしい関係を構築・強化することは両国の利益にも合致するものであり、安全保障、互恵的な経済協力等あらゆる分野で協力していくこと、また、日露間の最大の懸案である北方領土問題の最終的解決に向け、プーチン大統領とともに双方が受け入れ可能な解決策を見い出すべく努力していく方針を伝えました。
こうした昨年の動きを踏まえ、本年はあらゆる分野において両国の関係をさらに発展・深化させていくことが期待されています。そのために不可欠となるのは相互の信頼です。北方領土問題の解決により、日本とロシアは真に信頼できるパートナーになれると考えています。
―極東の発展について、プラス面とマイナス面は? またその露日関係への影響は?
極東・シベリア地域は人口が少なく、しかもさらに減り続けており、インフラも不十分で、それらが同地域発展の足かせになっていると承知しています。
昨年のウラジオストクAPECで、日本を含むアジア・太平洋諸国もロシア極東地域への関心を強めていること、また、ロシアが極東発展省を創設し、極東・シベリアの開発を重視する姿勢を示していることから、隣国である日本との協力の可能性はこれまで以上に大きいものがあると考えます。
極東・シベリア地域では、サハリンにおけるエネルギー資源開発のほかにも、現在、ウラジオストクLNG(液化天然ガス)プロジェクト、イルクーツク州における「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(JOGMEC)とイルクーツク石油やガスプロム・ネフチとの共同開発や、北海道銀行の発意によるハバロフスク市郊外の農場における技術協力等、具体的な日露協力プロジェクトが進行しつつあります。
こうした分野のほかにも、輸送インフラ、省エネ、スマートグリッド、ハイテク技術、医療など、様々な協力のポテンシャルがあるので、これらの分野での優良案件の発掘、実現のため両国政府も協力していく必要があると思います。(ロシア新聞)>
杜父魚文庫

コメント

  1. さー より:

    ロシアは凶暴な国なので、重要なのは、ロシアからの侵略をいかに防ぐかということです。治安維持の点からは、ロシア人が日本に入ってこないようにすることも重要で、そうすると、仮に平和条約を結ぶとしても、安易な交流の拡大を進めるべきではありません。
    また、千島・歯舞の問題は、国内で歴史的な経緯を教育することから始めるべきです。樺太千島交換条約、ポーツマス条約、日ソ不可侵条約、カイロ宣言、サンフランシスコ条約(ただしソ連は署名していない)を考えて、そもそも交渉の対象は4島だけなのか、ということも含めて、再度検討するべきことです。
    仮に平和条約を結ぶとしても、国境を画定させない選択肢もありですね。

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