12058 映画「エンペラー」が描く日米恋愛  古森義久

アメリカ映画「エンペラー」についてです。この映画に彩りを添えるのは、アメリカ軍人と日本女性の恋愛です。
<アメリカ映画が描いた昭和天皇 「エンペラー」を見て実感した日米関係の成熟>
ただし同元帥としては天皇を被告として追及すれば、日本側は一斉に抵抗し、戦争がまた始まることになると判断する。だから、できればなんとか天皇を有罪扱いにはしたくない、と考えている。
フェラーズ准将の必死の調査もその方向を目指して、天皇が開戦の決定には直接には関わっていなかったことを証する事実関係をなんとか見つけようとする。
このへんまでは歴史上の事実に沿った展開ではあるが、そこに明らかにフィクションのラブストーリーが大きくからんでくるために、映画全体が人間的な感じを強くする。米国側の要人も日本側の要人もみな実在の人物たちばかりを並べているとはいえ、映画の直接の原作は小説である。
その小説が描き出すフェラーズ准将の恋は一途な純愛なのだ。フェラーズ氏が日米開戦のずっと前に米国の大学で知り合った日本人女性を、廃墟のようになった戦後の日本で探そうとするのである。
日本人女性は戦前の米国への留学生で、若きフェラーズ氏と恋仲になる。女性は戦争前に日本に帰るが、彼が日本を訪れ、再会する。
だが日米両国の対決が2人を引き離し、戦争が起きる。そして占領下の日本では、フェラーズ准将は天皇の戦争責任について調査する大任務を引き受けると同時に、かつての恋人 の行方を必死で探すのである。
映画では、戦争行為自体については日本を攻撃するだけでなく、欧米諸国のアジア植民地支配や米国の日本への無差別爆撃に対する批判的な言葉も述べられる。
日本側の要人が「もし他国の領土を武力で奪うことが犯罪ならば、欧米諸国はみな日本よりもずっと先にその罪を犯してきた」などと語るのだ。
米軍の1945年3月の東京大爆撃の模様も詳しく描かれ、戦後の日本側要人がその爆撃を非難するという場面もある。そしてなによりも、日本側の登場人物たちが天皇をはじめとしてみな人間らしくまともに描かれていた。(つづく)
杜父魚文庫

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