尖閣防衛に対するアメリカの立場の紹介です。アメリカの一部には「尖閣防衛は日本に任せよ」という意見があるわけです。
その意見の持ち主たちにとっては安倍晋三首相の訪米の際の「日本が尖閣を防衛する」という言明は、まさに大歓迎ということになります。
<<「米軍は尖閣を守るな」という本音 価値のない島のためになぜ中国軍と戦闘するのか?>>
「米国は中国軍との直接の戦闘を避けるべし」マクデビット氏はさらに尖閣についての証言を続けた。
「米国政府が尖閣諸島の日本の主権を認めることはまずないでしょう。日本側はもちろんその承認を望むわけですが。尖閣諸島は沖縄返還協定によりその施政権が日本側に返還されました。ただし、米国上院でのその協定の批准審議の際に、同協定が『紛争地域』の最終の主権決定には影響を与えないことが明記されました」
「米国は最終の主権に関する立場を明確にしない一方、尖閣諸島が日本の施政権下にある限り、日本領土として米国は日米安保条約により防衛の責務を負うとの結論を出しました。
この点の米国政府の立場に関するすべての曖昧性は、2010年10月に当時のヒラリー・クリントン国務長官が『尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用を受ける』と公式に言明したことで取り除かれました。つまり米国は尖閣諸島の防衛を巡る中国との紛争では日本支援の責務があるということです」
「この米国の尖閣防衛の言明は日本に確約を与え、中国の衝動を抑止する重要な一歩であり、さらにアジアの他の米国の同盟国に対して、中国の圧力に直面する友邦を見捨てないことを間接に示す保証となるでしょう。しかし米国にとっては、米中衝突の発火点を台湾のほかにもう1つ作ってしまったことになります」
このへんまでのマクデビット氏の証言はすでに明白となったことの総括である。米国政府は尖閣有事での日本への防衛支援を誓った、ということである。だがそのことが米国にとって果たして賢明なのかどうか。同氏は懐疑や対案を述べていく。
「この米側の誓約は米中間の軍事衝突につながるのか。そうなるかもしれません。しかし日本の安倍晋三首相が2月の訪米の際、質疑応答で日本が尖閣を防衛すると言明しました。『私たちの意図は、米国にあれをしてほしい、これをしてほしいと頼むことはせず、まず自分たちで自国の領土を現在も将来も守るつもりだ』という意味の答えを述べたのです。
私はこれこそホワイトハウスが明確にすべきメッセージだと思います。日本が尖閣防衛の主導を果たす。米国は有事には偵察、兵站、技術助言など基本的に必要な後方支援を提供すればよい。米国はこの無人の島を巡って中国人民解放軍との直接の戦闘に入ることを避けるべきなのです。尖閣諸島はもともと住んでいる住民もいない。戦略的な価値も少ない。本来、それほど価値のある島ではないのです」
マクデビット氏の提案の核心は上記の部分である。尖閣諸島の防衛だけのために米国は中国と戦うな、と提言しているのだ。尖閣にはそれほどの価値がないというのである。この提案は明らかにクリントン国務長官の言明に背反する新政策案ということになる。(つづく)
杜父魚文庫
12270 安倍首相の尖閣防衛誓約の重み 古森義久

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