ケリー米国務長官は13日、北京入りし、習近平国家主席や李克強首相、王毅外相らと相次いで会談した。会談内容は伝えられていないが、ケリー米国務長官が習近平国家主席らに、北朝鮮の挑発行動を抑え込むよう要請したのは間違いない。
しかし、中国側は北朝鮮の好戦的な態度を口実に米国が対決型の軍事力を強化していることに懸念を示した可能性がある。さらには「中国人のほとんどは、米国のリバランス戦略を中国への封じ込め戦略だと認識している」という側面がある。
英ロイターは、<中国のジレンマ>と<ケリー国務長官を待つ難題>のふたつのテーマで米中会談の難しさを北京から伝えてきている。14日にはケリー米国務長官は来日して安倍首相と会談する。ケリー・アジア外交の努力に対して、北朝鮮が15日にもミサイル発射で応えることにもなりかねない。
<[北京 12日 ロイター]中国外務省の洪磊報道官は12日の定例会見で、北朝鮮がミサイルに搭載可能な核兵器を保有している可能性があるとする米国防総省傘下機関の報告書について、コメントを拒否した。
報道官は、朝鮮半島情勢の緊迫化は対話によって解決しなければならないとの自国の立場を強調した。
[北京 12日 ロイター]12日付の中国・新華社は、北朝鮮との国境付近で、中国軍が増強されているという事実はない、と報じた。
新華社は、匿名の国防省高官の発言として「報道は正しくない」と報じた。一部外国メディアが中国軍の増強を伝えていたことに対応した。
スポークスマンは「中国は朝鮮半島の現在の状況を注視しており、北東アジアの平和と安定を守ることに常にコミットしている」と述べた。
[ワシントン 10日 ロイター]北朝鮮はなぜ威圧的な行動を取り続けているのか。その答えを知っているのは金正恩第一書記だけだが、北朝鮮は同盟国の中国との関係を損ねてまで、敵国である米国を利する行為をしようとは思っていないはずだ。
「リバランス」や「ピボット」と呼ばれる米国のアジア重視戦略は、北朝鮮の好戦的な態度を口実に強化されているのが実情だ。北朝鮮よりも米国に神経をとがらせる中国にとって、ここ数カ月間の北朝鮮によるミサイル・核実験は懸念ではあるが、今回の事態への米国の対応はよりやっかいな問題と言える。
北京の清華大学米中センターのSun Zhe氏は、「われわれは北朝鮮がどのような国家かを理解しており、北朝鮮がゲームをしているだけだということも分かっている」とし、「最も重要なのは、米国がリバランス戦略を続ける口実として軍事訓練を利用するのを、われわれ中国人が非難しているということだ」と述べた。
米国は北朝鮮の度重なる挑発に対応するため、ステルス型のB2戦略爆撃機、B52爆撃機、F22ステルス戦闘機、イージス駆逐艦「ジョン・S・マケイン」などを配備した。さらに米国は、グアムに戦域高高度広域防衛(THAAD)ミサイル防衛システムを配備すると発表したほか、読売新聞は、日本も地上配備型の地対空誘導弾「PAC3」部隊を沖縄に常時配備すると報じた。
<中国のジレンマ>
こうした米国の兵力展開は北朝鮮対策を主眼にした一時的なものだ。しかし、自国周辺に米国の兵力が配置されるのを防ごうとする中国の軍事戦略に対抗するため、拡大される可能性も考えられる。
中国が抱えるジレンマは、習近平国家主席の言葉の中に読み取ることができるかもしれない。習国家主席は7日、アジア経済などを企業からが議論するボアオ・アジアフォーラムで基調講演を行い、いかなる国も「自らの利益を確保するために地域や世界を混乱に陥れるのは許されない」と述べた。
北朝鮮の名前を出さなかったことから、この言葉は北朝鮮だけではなく米国に向けて発したとも推測できる。そこには、米国のリバランス戦略に懸念を抱く中国の姿が透けて見える。「中国人のほとんどは、米国のリバランス戦略を中国への封じ込め戦略だと認識している」。国際危機グループのアナリストStephanie Kleine-Ahlbrandt氏はこう解説する。
一方でカーター米国防副長官は8日、ワシントンでリバランス戦略と北朝鮮に対する国防総省の対応について説明。中国が米国の兵力展開に懸念を抱いていることについては、「中国が懸念を解消したいなら簡単な方法がある。北朝鮮に挑発行為を止めるよう語り掛けることだ」と切り捨てた。
<ケリー国務長官を待つ難題>
カーター国防副長官は、リバランス戦略が米国の戦後の政策を継続させたものだとの立場を示しており、米国のこうした方針によって日本や韓国、東南アジアや中国、インドが紛争のない状態で政治的・経済的発展を遂げられたとしている。
「われわれにとっても、この地域の人々全てにとっても良いことだ。リバランス戦略は、特定の国家を標的にしたものではない」と同副長官は言う。また、アフガニスタンからの本格撤退に伴って、水上戦闘艦や偵察艦などの戦力も太平洋にシフトさせられるとしている。
ただ、リバランス戦略が地政学的な根拠に十分基づいているとするアナリストでさえ、国防総省の声明と兵力展開はオバマ政権のアジア戦略の中心に仰々しく掲げるべきではないとの考えを示す。
米カーネギー・エンダウメント国際平和研究所でアジアを専門に扱うダグラス・パール氏は、「米国はリバランス戦略の軍事的側面を過大評価する一方で、外交的・経済的要素を過小評価してきた」と指摘。「中国の反応は『米国がやってくるから、われわれも軍事開発を進めて対応しなければ』といったものだ」と述べた。
今週、中国、日本、韓国を就任後初めて訪れるケリー国務長官は、リバランス戦略の中国に対する説明を微調整する必要があるだろう。中国では政治と軍のトップらが米国に極めて懐疑的であるため、中国を納得させるのはかなり難しい仕事になりそうだ。
前出のKleine-Ahlbrandt氏は、「陰謀論を疑っている人を説得する際に問題となるのは、いくら話しかけたところで、それも陰謀論の一部だとみなされてしまうことだ」とし、米国が中国封じ込め論の誤解を解けるかどうかは不透明だと述べた。(ロイター)>
杜父魚文庫
12299 北朝鮮説得の難しさに直面するケリー・習近平会談 古澤襄
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