12323 ケリー氏 北朝鮮の非核化に成功すればミサイル防衛体制を縮小  古澤襄

<アジア外交の面で未知数のケリー氏がクリントン前国務長官の後任となったことで、日本の政府関係者の間ではこれまで不安が広がっていた。
今回国務長官として初めて日本を訪れたケリー氏は日本政府にある程度の安心感を与えたが、一方で、中国との領土問題や同地域におけるミサイル防衛計画への米国支援について今後緊張が高まったときの米国の姿勢を予想させるいくつかの兆候を残していった。
尖閣諸島をめぐって中国と領有権争いが続いている日本は、クリントン前国務長官が示した強い日本擁護が踏襲されることを期待していた。14日、日本に到着して間もなく行った記者会見でケリー国務長官はその期待に応えた。
尖閣諸島をめぐり領海やときには領空侵犯を繰り返す中国を念頭に、「日本の施政下にあり、現状を変えようとする、いかなる一方的な行動にも反対する」と述べたのだ。
また、 15日に行われた安倍晋三首相との会談では、安倍首相の側近によれば、尖閣諸島について今後も米国の立場に変更はないと確認した。 
そして15日に日本を発つ前に北朝鮮の拉致問題に触れることも忘れず、拉致被害者の家族と面会した。岸田文雄外務相は感謝の意を表し、今後も拉致問題への米国の理解と支援を期待すると述べた。
だが、ケリー国務長官は一方で、中国だけでなく韓国とも争われている領土問題に対してより中立的と思われる発言もし、さらに安倍首相には、第二次世界対戦時の日本の行為を謝罪した過去内閣の談話を見直すことのないよう釘を刺した。
14日の記者会見では「問題が日本海、東シナ海どこであろうと、それが岩礁であれ島であれ、挑発的な行動を控えるように要請してきた」と述べ、平和的解決を呼びかけた。

日本海への言及は正式な議題には上っていなかったが、竹島をめぐる日韓の領土権争いを念頭に置いたものと思われる。
ケリー氏はまた、訪中時、中国が北朝鮮の非核化に成功するならば東アジア地域のミサイル防衛体制を縮小すると発言して日本側を驚かせた。
後になってこれは北朝鮮危機を受けて配備した軍備に言及したものだったと釈明したが、ミサイル防衛計画は北朝鮮だけでなく中国からの脅威にも対抗するものと考える日本にとっては軽視できない発言だ。

ワシントンの外交問題評議会(CFR)の上級研究員、シーラ・スミス氏は「日本は米国よりもずっと長くミサイル拡散を問題視してきており、ミサイル拡散は核の拡散よりも安全保障に脅威だとみている」と指摘する。
ブッシュ前政権でアジア問題を担当していた戦略国債問題研究所(CSIS)のマイケル・グリーン上級副所長兼アジア・日本部長はケリー国務長官の尖閣諸島に関するコメントは「日本を安心させるためのリスト項目を1つクリアしたが、中国でのミサイル防衛網に関する発言は安心感を損なうもので、訂正が必要だったし、確かにそれを訂正した」と述べた。
同氏は、複雑さを増すアジアの安全保障問題に正しい対応をすることは容易でないという教訓が得られただろうと考えている。
政策研究大学院大学の道下徳成准教授は「日本はケリー国務長官の一挙手一投足に注目しており、あのような混乱を招くメッセージを発信することは信頼を失うことになりかねない。他の政策でも一貫性がないのではないかとの印象を与える可能性がある」と指摘した。(ウォール・ストリート・ジャーナル)>
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