円安 → 金利高 → 株安の流れが形成される可能性。ジョージ・ソロスが連続的に円安への警告発言を続けている。
4月10日、中国・海南島で開催されたボーアオ経済会議で講演したソロスは、日銀の「異次元」的なデフレ克服、インフレターゲット2%という日本の大胆な金融緩和に言及し、「リスクの高い実践だ」と批判した。
安倍政権発足直後には円安にぶれると予測してドル投機をおこない、およそ940億円の荒稼ぎをしたばかりだが、こんどはおもむきが違う。
「日本政府は量的緩和の賭けにでたが、流動性の高い通貨供給でインフレが誘発されるだろう。金利は押し上げられ、国債の発行コストがかかり、持続不可能なレベルに陥没の懼れがある」と問題点を指摘した。
投資家が円のポジションを維持すると「通貨安により価値が下がるため円からのキャピタル・フライトが起こるだろう」とし、日本国債の暴落の可能性も指摘した。
つまり従来の構造、黒田日銀総裁前までは「金融緩和―円安―株高」という図式が描けたが、これからは投機筋が円安を仕掛けると、「円安―長期金利高―株安」となり、さらに秋からの消費税増税が加わると、現在の好況は続かない。
「英国も金融緩和を実践しており、この影響はユーロに波及するだろう」とソロスは述べた。
その前日にソロスはフランクフルトで講演しており、「ユーロ圏の金融当局が必要な刺激策をとらないためドイツは九月までに景気後退になる」と予測した。同時に「日本の円安により、ドイツは打撃を受けるからだ」。
▼ドイツは九月から景気後退に入る?!
ソロスの持論はユーロの共通債発行である。しかしドイツでは「反ユーロ同盟」が新党を結成し、つぎの選挙に臨むことになったため政治的運動として注目を集めている。ソロスの演説は、この新党結成前である。
「米国はシェール瓦斯開発により、ドルが最強通貨となっている」と視点を移し替え、「中国の輸出志向経済はあと二年もつかもしれないが、ハードランディングの危険性がある」と並み居る中国人幹部の前でソロスは演説を終えた。
しからばボーアオ会議が開催された中国のメディアは円安をどう見ているのか?
「日銀の量的緩和は副作用が深刻な懸念であり、警戒が必要」というのは人民日報(日本語版、3月21日付け)。
かく続ける。「円安が世界的な為替操作戦争を引き起こすか、円安が中国の輸出に与える直接的影響は小規模に留まる。中国の対日輸出は全体の7・5%しかなく、対欧、対米はそれぞれ17%だから、問題は深刻ではないが・・。」
これが世界最大の為替操作をしている国(中国は対ドル固定制)の言い分である。
(読者の声)貴誌三九二四号にてヒラリー・クリントンの後継者となったジョン・ケリー国務長官に関する記事を拝読。
二〇〇四年にブッシュ・ジュニアと大統領選挙で争った同氏はケネディー以来のカソリック教徒の大統領を目指していた。同時に米国名門エール大学のエリート学生結社のメンバーだそうだが二つは両立しえるのかと考えていたら或る事を思い出した。
今日、共通通貨を持つEU(欧州連合)は一九九二年統合時にはEC(欧州共同体)と呼ばれていた。その頃に何冊か欧州統合に関する本を書かれていた(私は歴史学者と思い込んでいた)経済学者の故篠田雄次郎・上智大学教授に当時既に絶版になっていた著書『聖堂騎士団』を実費で御譲りして貰えないか旨厚かましい手紙を差し上げた事があった。
ところが私が手紙を出した同じ年の一九九二年に六十歳過ぎという若さで篠原教授はお亡くなりになられていた。悲しみの中だったのだろうが奥様から御丁寧な御手紙と御本を御送り頂いた。代金は無用との事で封筒の中には篠原氏が上智大学で西洋の騎士団をモデルに創った学生倶楽部の説明などがあり楽しく読ませて頂いた記憶が有る。
さて、話は戻るが現在米国名門大学などに有る秘密倶楽部は今日どれほどの影響力を持っているのだろう。
また何故人々は開かれた米国社会で閉鎖的な集団を創り維持するのか。それらが国益など公共に反する場合はどうなのか。現に同組織のメンバーは二〇〇四年にブッシュでもケリーでもどちらでも良かったと言う。そんな馬鹿な事が有るか。
日本の松下政経塾出身者が民主党政権で日本を混乱に陥れたが同塾出身者が自民でも維新でも民主でも政経塾ОBが政権内で影響力を持てば良いなどと言ったらそれはおかしい。
明治維新で松下村塾出身者が日本の中枢で活躍したが、それはあくまで日本の為に松下村塾出身者が在ったから出来たのであって、松下村塾出身者が一私塾関係者や山口県の地域エゴの為に在ったならば日本国はとんでもない不幸な指導者を持った事だろう。
松下政経塾は建塾の理念はともかく実体は松下村塾とは違う。民主党の日の丸を切り刻んだ党旗を見て何も怒りを感じず平然とする政治家を輩出してしまった責任は大きい。
もしも松下政経塾が松下村塾の様に国家の為の指導者を養成する事を目的として創設されたならば即刻廃校にすべきだ。実際に日本国民の誰も松下政経塾を必要としていない。逆に松下村塾は吉田松陰死後に亡くなったが、人々は未だ忘れず跡地を訪れる人は絶えない。(道楽Q)
杜父魚文庫
12324 ソロスの「円安は雪崩となる」という予言をどう読むか? 宮崎正弘

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