4月13日付けの英紙・フィナンシャル・タイムズは、「韓国に投資している人にとっては、北朝鮮より黒田東彦・日銀総裁の”バズーカ砲”の方が心配?」と英国流のジョークを交えた論評を掲げた。
「韓国のマクロ経済の状況は厳しいように見えるが、ヘッジファンドが空売りを手仕舞い始めるため、お買い得品を探すにはちょうどいい時だと思う」
「外国人投資家のパニック売りが多少見られるが、今株を買えば、良いリターンが得られることは分かっている」という投資家心理を指摘する一方で
「確かに韓国株は割安に見えるが、一体どんな業績数値に基づいているのか? 韓国株は人が思っているほど割安ではない」と正反対の見方があることを指摘している。
<朝鮮半島では金正恩(キム・ジョンウン)の核兵器が注目の的になっているかもしれないが、韓国に投資している人々にとってより大きな悩みの種は黒田東彦氏のバズーカ砲だ。
成長のために総力を挙げるという日銀総裁の決意は、日本株の投資家にとっては恩恵だったかもしれないが、多くの韓国企業にとっては逆効果になっている。
韓国政府がいつあってもおかしくない北朝鮮のミサイル発射を待ち受ける中、朝鮮半島では緊張が高まったままだ。
北朝鮮政府の敵意に満ちた言葉――さらには敵意に満ちた行動――は以前も株式とウォンの両方にマイナスの影響を与えたが、そのインパクトは必ずと言っていいほど短命に終わった。
「我々は北朝鮮の過去の挑発から教訓を学んだ。株式市場は、数日間は急落する傾向があるが、いつも回復する」とトラストン・アセットマネジメントのチョン・インキ氏は言う。
■北朝鮮からの脅威に加え、日本の金融革命も懸念材料に
韓国総合株価指数(KOSPI)は、政治的緊張の高まりと経済のつまずきに打ちのめされて、今年アジアで最もパフォーマンスの悪い株価指数になっている。
韓国の中央銀行は11日、2013年の成長見通しを2.6%に引き下げたが、利下げを求める要求には抵抗した。そして今、考慮すべき新たな要因が誕生した。日本の金融革命である。
2008年夏から2012年12月にかけて、日本円は韓国ウォンに対して50%以上上昇した。通貨の面での相対的な強みが、KOSPIで大きな比重を占めるサムスンや現代といった韓国の輸出企業が世界中で市場シェアを拡大する助けになった。
だが、日本の「アベノミクス」の後押しのおかげで、円は6カ月足らずで約20%下落した。長らく高い輸出コストと戦うことに慣れてきた日本企業が円安を活用し始めている今、韓国のライバル企業が最大の敗者になると見られている。
「外国人投資家は韓国株を大量に売り越している。地政学的な状況だけでなく、韓国の輸出企業に対する懸念も原因だ」。バークレイズの韓国調査部門責任者チャニク・パク氏はこう言う。「投資家と話すと、彼らは過度な円安が韓国の輸出企業に与えるインパクトをとても気にしている」
■日本株の上昇も足かせ
日本株の上昇も足かせになってきた。日本株への投資比率を高めようとする投資家は、取引を賄うために大規模で流動性のある市場に目を向けてきた。最も大きな影響を受けたのが、韓国と大中華圏だ。
年初来、KOSPIはアジアの中で出遅れてきた。米ドル建てで見ると、KOSPIは8%下落している。その間、日本を含むMSCIアジア太平洋株価指数は5%上昇した。この1カ月だけでも外国人投資家は韓国株を38億ドル売り越した。
だが、韓国の1つの取柄は、実は悪材料かもしれない。
日本以外のアジアに資金を配分しようとする投資家にとって、この地域には価格とモメンタム(勢い)の間にジレンマがある。東南アジア市場は過去2年間で急騰しており、多くの市場ではPER(株価収益率)が目もくらむような高さになっている。例えば、フィリピン株価指数は現在、20倍を超えるPERで取引されている。
中国株は、短期間の息をのむような高騰の後、失速しており、多くのアナリストは今、市場が年内いっぱいボックス圏内にとどまると見ている。インド株も結果を出せずにいるが、比較的高いバリュエーションで取引されている。
■割安感が出てきた韓国株だが・・・
対照的に、韓国株は割安に見える。KOSPIは長い間、地域の他国に対して「コリアディスカウント」で取引されてきたが、約8.7倍という現在のPER――過去の平均は10倍――は注目を集め始めている。
「韓国のマクロ経済の状況は厳しいように見えるが、ヘッジファンドが空売りを手仕舞い始めるため、お買い得品を探すにはちょうどいい時だと思う」。ウリィ・アセットマネジメントのキム・ハクジュ氏はこう話す。
「外国人投資家のパニック売りが多少見られるが、今株を買えば、良いリターンが得られることは分かっている」
HSBCのアジア株戦略部門責任者、ヘラルド・バン・デル・リンデ氏は、見掛けは人を惑わすことがあるとし、一見すると低い韓国株のバリュエーションは、業績下方修正や業績見通しの未達の長い実績と矛盾している、とリンデ氏は言う。
■どんな業績数値に基づいて「割安」なのか?
「成長が限られている世界では、業績予想は高揚しすぎており、楽観的すぎる」とリンデ氏。「確かに韓国株は割安に見えるが、一体どんな業績数値に基づいているのか? 韓国株は人が思っているほど割安ではない」
バリュエーションが割安に見えるとしても、市場には好転のための明白な手掛かりが欠けている、と言う人もいる。
「バリュエーションの観点から見ると、韓国市場は注目だ。だが、焦る必要はないと思う」とJPモルガン・アセット・マネジメントのアジア担当チーフストラテジスト、タイ・フイ氏は言う。「業績改善の兆しが出てくるまでは、投資家は比較的保守的な態度を続けるだろう」By Josh Noble and Song Jung-a(フィナンシャル・タイムズ)>
杜父魚文庫
12374 韓国株を直撃する「黒田バズーカ」 古澤襄

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